ユノさんの後ろ姿を

テミンは不安そうな瞳で 

追いかけていた

 

「テミン   お腹空いたでしょう?

    御飯を食べよう」

 

僕は、テミンの背中を押して

食卓につかせた

 

でも、テミンは大好きなシチューを

目の前にしても

ポロポロと涙を溢し始めた

 

「お兄ちゃん…

   僕はどうして

   パパと一緒に暮らせないの?」

 

しゃくりあげながら話す

テミンのその一言が

僕の胸に突き刺さる

 

「僕、パパと暮らせないのは嫌だ 

   ねぇ  お兄ちゃん

   パパと一緒に暮らしたら駄目?」

 

テミンはすがるような瞳で

僕を見つめている

 

僕はどう返事をしたらいいのか…

 

テミンの頭を撫で

やっとのことで言葉を口にした

 

「テミン…ごめんね」

 

ひたすら頭を撫でやって

慰める事しか出来ない…

 

その時

ユノさんが戻ってきた

 

「テミン  

   ママとお話ししたよ

   ママもとても心配していた

   明日には向こうに送って行く…」

 

「嫌だ‼︎」

 

テミンは

強くかぶりを振って立ち上がると

ユノさんにしがみついた

 

「僕は、パパと一緒に暮らしたいんだ

    もう僕のこと嫌いになったの?」

 

ユノさんは

一瞬泣きそうな顔をして

テミンを抱き締めた

 

「パパがお前の事

    嫌いになるはずなんてあるわけないだろう

    ただね …テミン

    大人にはどうしても出来ない事が

    あるんだよ」

 

そんな大人の事情なんて

テミンにわかるはずもないのに…

 

ただ泣き続けるテミンと

そんな姿をただあやし続けるユノさん

 

僕はそんな2人を

黙って見守ることしか出来なかった

 

 

泣き疲れて眠ってしまったテミンを

僕達が使うベットに寝かせ

ベッドのわきに腰掛けて

涙で汚れた顔をタオルで拭いた

 

テミン…君に

こんなに辛い思いをさせているのは

僕なのかな?

 

寝顔を見つめながら

ユノさんにしがみつく

テミンの姿を思い出した

 

きっと、テミンは

ユノさんとずっと一緒に暮らしたいはず

 

だけど、僕がここにいる事が

2人の障害になっているとしたら

僕はどうすればいいの…?

 

こんな幼いテミンの事を考えていたら

辛くなって、思わず涙が溢れてきた

 

「どうして  泣いている?」

 

いきなり聞こえてきた声に

驚いて振り返ると

いつの間に来ていたのか

ユノさんがすぐ後ろに立っていて

心配そうな表情で

僕を見下ろしていた