チャンミンの家へ着くと
ドアが半分開いていて
俺は慌てて中に入った

部屋の中に入ると
ぐったりしたように
ソファに寝そべっている
チャンミンの姿があった

「どうしたんだ⁉︎」

チャンミンの肩に手を回し
体を抱き起こした

顔を見ると、唇の端が切れて
血が滲んでいた

「大丈夫か?」

「心配かけてすみません」

「何があった?
    どうしてここに来たんだ?」

チャンミンの体を支えて
ソファに座らせた

「ワインを…取りに来たんです」

「ワイン?」

ふと、床に目をやると
ワインの瓶が割れて
床に赤い液体が広がっていた

「人に貰った美味しいワインを…
   取りに戻ったんです
   そしたら…」

玄関のチャイムが鳴って
不用意にドアを開けてしまったら
テジョンがいきなり部屋に
入って来てしまったと…

いきなり抱きつかれて
唇を塞がれて…

それを振り払おうと必死で
抵抗してもみ合っているうちに
テーブルの上に置いていた
ワインの瓶が倒れてしまった

それでも
テジョンが離れないから
抵抗して暴れていたら
しばらく、誰もいなかった部屋から
すごい物音がするのを
聞いた隣の人が
チャイムを鳴らしてくれた

何度も繰り返し鳴り続ける
チャイムの音に
テジョンは、不安そうな顔をすると
慌てて部屋から逃げ出した…

チャンミンは震えながら
俺にそう話した

「テジョンと入れ替わりに
   部屋に駆けつけてくれた人が
   警察を呼ぶと言ったんですけど…

   僕が呼ばないでと
   頼んだんです」

「どうして?こんな事されて
   黙っているなんて…」

俺が怒った様に
そう言うと

「テジョンは…
   本当は気が弱いやつなんです
   だから、チャイムの音を聞いて
   逃げ出した…」

チャンミンは
体のあちこちが痛むのか
顔をしかめ
身体を手で摩りながら
か細い声でそう言った

俺は側に寄って
チャンミンの体を支えながら

「危ないとわかっているのに
   どうしてワインなんか
   取りに来たんだ?」

頭に手をやり
髪をそっと撫でた

「ユノさんと…飲みたくて…
    取りに戻ったんです

    ユノさんを
    喜ばせたかったから…」

チャンミンの言葉に
俺の心がざわついた

指で顎を持ち上げて
唇の傷に手を触れる

「血が…出てる」

ハンカチを取り出して
傷口にそっと充てて
血を拭き取った

この唇に…
他の男が触れたと思うと
身体中の血が煮え滾るような
怒りを感じた

その時
俺の胸の中で何かが弾けた

腕を引き寄せて
そのまま抱きしめた

「ユノ…さん?」

チャンミンが驚いた顔で
俺を見た

自分を抑えられなくて
チャンミンの唇に
自分の唇を重ねていた