テミンを抱いたまま
チャンミンはため息を吐いた

「すみません 助かりました
変な嘘を吐かせてしまいましたね」

硬い表情で立ち上がると

「とにかく、家に入りましょう
事情を…話します」

テミンの手を引いて
無言のまま
マンションの自動ドアの向こうに
入っていった

俺も、黙ったまま
チャンミンの後を追った

俺たちを
部屋に案内すると
テミンをソファに座らせた

「ここで、テレビを見ていてくれる?」

チャンミンはテレビをつけて
DVDを操作して
テミンの大好きな
アニメを映し出した


それから俺は促されて
彼の寝室に入った

チャンミンは部屋に入って
俺の方を向くと

「さっきはありがとうございました」

目を伏せて
俺に頭を下げた

「あの人は…どういう人?」

チャンミンと同じくらいの年齢だった

「僕の…高校生の頃の同級生です」

「知り合いだったのか
でも、彼が何であんな事を?」

あれはどう見ても
無理やり迫っていた

彼は、チャンミンの事が好きなのか?
新しい…恋人って
どういう意味だろう…

いろんな思いが俺の頭の中を巡った

「彼は…テジョンは
学生時代から僕の事を
追いかけ回していたんです」

「それって…ストーカーじゃないか
何で、誰かに相談しなかったの?」

学生時代からのストーカー…

そんなに長く我慢していたなんて…
半ば呆れながらそう言った

「高校の時の先輩が
そばにいて
僕を守ってくれていたんです

初めて出会った時に
そう言ってくれて
それからずっと…」

「先輩が…?」

守る…その言葉を聞いて
何故だか胸が痛んだ

「だったら何故、急に変わったんだ?」

何かきっかけがないと
あんな事をしないはずだ

「先輩は同じ病院に勤める
小児科医でもありました

1年前に親の病院を継ぐために
その病院を辞めて
そして、3か月前に
結婚したんです

テジョンは、その人のことを
ずっと僕の恋人だと
思い込んでいました

本当はそうじゃなかったんだけど…」

そう言ったチャンミンの
表情が気になった

「その人の事を好きだった?」

しばらく、考え込むような
沈黙の後
首を横に振った

「わかりません
先輩…

シオンさんのことは
好きだったのか…
憧れだったのか…

でも、ずっとシオンさんの
側にいたくて
大学も追いかけていきました」

その人の事を思い出したのか
ふわりと柔らい表情で
笑顔を浮かべた

学生時代から
ずっとチャンミンを
守り続けていたと言う先輩…

その人の側にいたかったと
笑顔を見せるチャンミン…

気がつくと俺は
会った事もないその人に…

嫉妬のような気持ちを抱いていた