「そんな所にいたんだね」

シオンさんの声がして
僕とテジョンは
同時に振り返った

「探していたよ チャンミン」

シオンさんは
何事も無かった様に
テジョンの横を通り抜けると
僕に近づいた

そのまま
テジョンの手を振り払って
僕の身体を自分の方に引き寄せた

「何するんだよ!」

テジョンは怒った顔で
シオンさんを睨みつけた

「お前…ここで大声出して
皆んなに知られていいのか?」

「えっ?」

「お前がここで、男を襲ってるって
大声出してやろうか?
学校中の評判になるだろうな
それでもいいのか?」

シオンさんもテジョンを
睨み返した

「うっ…」

言葉に詰まったテジョンは
チッと舌打ちすると
悔しそうな顔をして
僕達の前から立ち去った

「大丈夫か?」

テジョンの後ろ姿を
見送ったシオンさんは
僕の顔を覗き込んだ

「だ…大丈夫…」

そう言いかけて
フラっと身体が揺れた僕を
シオンさんが慌て抱きとめてくれた

「大丈夫じゃないだろ
俺が家まで送るよ」

そう言って、僕を支えながら
鞄を取りに行った


「あいつ…いつも
君の事を見てたんだ」

「えっ?」

帰り道で、シオンさんが
そんな事を言い出した

「なんだか、気持ち悪くなるくらい
嫌な目つきで
じっと見つめられてたの
気づかなかった?」

僕が首を振ると
シオンさんは呆れた顔をした

「君は、自分が周りに
どう見られているのか
無頓着すぎる
君は、女の子だけじゃなく
男からも狙われてるよ」

「そんは事…あるはずない…」

「あるよ…
だから、こんな事になっただろ?」

そう言われたら
返す言葉がない…

「俺が…あいつから
君を守ってやるから
何時も一緒にいろよ」

シオンさんは
僕の顔を見て微笑みを浮かべた

誰かに、こんな事を
言われたのは初めてだった

一緒にいて
ほっとするように
安心出来るのも…

僕の胸の中で
暖かい気持ちで
いっぱいになった

この気持ちが
何なのかわからないけど
シオンさんの微笑みが
僕の胸の中に
深く染み込んでいた…