翌日の朝
僕の部屋の窓から
2人で一緒に眺めた海は
朝日が昇る前に
一面が真っ赤に染まって
今まで見たどの景色よりも
美しく見えた

「綺麗な赤だね…」

ユノさんの声が
耳元で響いた…

背中から感じるユノさんの
温もりが心地いい

こんな時間がずっと…
続けばいいと
僕は思った…


それから
休暇が終わる日まで
ユノさんは、僕の家で暮らした

2人で買い物に行って
食事を一緒に作った

包丁を使うユノさんを見て
少し不器用なんだと
初めて知って
可笑しくて、笑って…

そんな事だけで
しあわせだと感じてしまう

一緒に食事をしたり
海辺で散歩をしたり…

でも、そんな時間も
あっと言う間に過ぎて
一緒にいる時間が
残りわずかになってくると
ふと、寂しさがよぎった

ユノさんは
休暇が終わると帰ってしまう

ずっと…一緒にいたいと
思ってしまう…

それは…僕の
わがままだとわかっていた

ユノさんには
大切な仕事があって
僕も、初めて社会人になって
仕事に就く…

お互いに、大切なことが
もう一つあって
どちらかを選ぶなんて事は
出来るはずもなかった…

でも…初めて人を好きになって
大好きな人と共に過ごす時間の
大切さを知った時…

心に迷いが生じた…
このまま…
離れたくない気持ちが
強くなる…

僕は…どうしたらいいんだろう

別れの前の日の夜
ユノさんの腕に抱かれながら
眠れずに、一晩を過ごした

真夜中に…これからの事を
ずっと…考え続けた

ユノさんとのこれからの事…
自分自身の未来…

夜が明ける直前に
朝日が昇る海が見たくなって
ユノさんの眠るベッドから離れた

1人で、窓際に立って
カーテンを引いて外を眺めた

真っ暗な海と空の間から
大きな真っ赤な朝日が
雲の間から昇って来た…

昇ってくる
太陽に向かって手をかざして
その温かさを、指先で感じた

太陽の光は
ユノさんのように、暖かい…

ユノさんは、その暖かさで
僕の事を優しく包んでくれる…

僕もユノさんの事を
大きな心で包む事が出来るような
人間になりたい…

朝の光を
全身に浴びながら
僕は…一つの決心をした…