「ユノさん、どう?」
通しを終えて、テミンが聞いた

ユノさんは少し考えててから
僕の顔を見て言った

「チャンドラ…お前歌えるだろう?」

「え?でも僕初めてで声がでないし…」
僕がそう言うと、ユノさんは
ステージに近づいて来て
僕らの前に立った

「知ってる歌は、ちゃんと声出して
歌ってみろ
もう一度、始めから通して!」

ユノさんの指示で、僕らは
もう一度通しで歌い出した

僕の歌える曲になった時
精一杯、歌っていると

「違う!もっと声出るだろ!」
ユノさんの叱責が僕に向けて飛んできた

演奏も止まって、
みんなビックリした顔で僕とユノさんを
見比べている

「もっと感情込めて、腹の底から
声出してみろ!」

ユノさんの言っていることは
解るけど
どんな風にすればいいのかがわからない
僕が戸惑っていると

「余計な事を考えるな!
感じたまま素直に歌えばいいんだ」

ユノさんが言った

「もう一度、今の曲を!」

ユノさんの指示で演奏が始まり
僕は夢中で歌い出した
はじめのうちは恥ずかしくて
躊躇いがあったけど
段々、音に反応する自分が楽しくなって
本当に夢中で歌っていた

気がつくと、演奏が終わっていて
みんなが僕を見つめていた

「お前…」

あ、やっぱり駄目だったかな?
そう思った時

「お前!すげえじゃん!」

そう言って、レイに肩を叩かれた

「お前、歌上手いや!
どっかでバンドやってたの?」

これは…褒められてるのか?
そう思って、ユノさんの顔を見た

彼は、満足そうに頷いてくれた
その顔を見て、僕は嬉しくなった

僕の歌でも人が喜んでくれる
生まれて初めての経験

なんだか、とても
気持ち良かった