しばらく、黙ったまま
抱き合っていたけど
俺は、決心して、チャンミンを
振り向かせて
二人で向かい合った

「チャンミン、
   俺の頭の中に、大きな塊が
   あるらしい…」

「それって…」

チャンミンは、絶句して
顔色は、蒼白に変わった

「うん、脳腫瘍だよ…」

「手術したら、治るんでしょう?」

チャンミンは、縋るような目で
俺を見ている

俺は、視線をそらした
チャンミンの目を、直視できない

「手術したら、治る可能性はある

   でも、俺のは
   腫瘍がある場所が悪くて
   手術が成功したとしても
   体に障害が残るかもしれない
   そして
   もしかしたら…」

チャンミンは固唾を飲んで
俺の次の言葉を待った

「記憶をなくしてしまう事も
   あるらしい…」

「記憶を…なくす?」

チャンミンは呆然として
俺を見た
言葉の意味を上手く理解できて
いないのかもしれない

いや、わかっていても、
受け入れきれないのかも…

俺はチャンミンを力いっぱい
抱き締めた

「記憶をなくすくらいなら…

    お前を忘れるくらいなら
    手術なんてしなくていい」

チャンミンを抱き締めたまま、
叫ぶように声をあげた
どうしようもない、悲しみに
押しつぶされないように…

チャンミンは、首を横に振った

「そんなの駄目だよ
   ちゃんと、手術しなくちゃ…
   手術しなくちゃ…だめだ…」

最後の方は言葉にならなかった
大きな瞳から涙がポロポロと
溢れて、俺のシャツも濡れていく

「わかってる
   生きることが大事だってことは

   だけど、もしもお前を忘れたら
   その時、お前はどうなるんだ
 
    誰がお前を守るんだ
    俺は嫌だ
    チャンミンを一人になんて
    できない…」

そう言って、涙が流れる頬に
唇を寄せた
そのまま、唇に移動して
深く、深く、口付けた