「反抗できなかった母」が、子どもの反抗期で初めて自分を取り戻すとき


― 思春期を通じて母が“自分の青春”をやり直すプロセス ―




はじめに:子どもの反抗に「なぜこんなに苦しくなるのか」



反抗期は「親を困らせる時期」ではありません。
それは、親と子のどちらかが“声を失ってきた”記憶を取り戻す時期です。

「うちの子、反抗期がないんです」と安心する親も多いけれど、
その“静けさ”の裏側に、抑え込まれた感情や、未消化の葛藤が潜んでいることがあります。

本記事では、
・なぜ母親世代の多くが「反抗できなかった」のか
・子どもの反抗が母の中の“抑圧された声”を呼び覚ます理由
・反抗期を「親子の分離と再生の儀式」として昇華する視点

これらを心理構造の観点からひも解き、
母自身が“自分を取り戻す”ための内的プロセスを描きます。






1.「反抗しなかった私」は、本当に幸せだったのか?



思春期の反抗とは、子どもが「自分とは何か」を形づくる大切なプロセス。
いわば「自我の誕生式」です。

「反抗期がない子ども」として育った母親は、親から見ると“手のかからない良い子”でした。
けれど今、わが子の反抗を目の当たりにして、ふと問いが生まれます。
あの静けさは「落ち着き」だったのか、それとも「抑圧」だったのか。

「反抗しない」と「反抗できない」は、似て非なるものです。
この差を見誤ると、大人になっても自我の輪郭が曖昧なまま残り、子育てという最も繊細な場面で影を落とします。



2.「反抗できなかった世代」を縛る、社会と家庭の構造



「親の言うことは絶対」──従順こそが“美徳”だった時代

「親の言うことは絶対」
そんな価値観のもとで育った世代が今、思春期の子を育てています。

かつての日本社会では、「従順さ」こそが美徳とされていました。
特に女の子には親や教師、そして社会の期待に応える“良い子”であることが求められ、
反論や主張は「わがまま」「生意気」と切り捨てられてきました。

反抗という行為は未熟さの証ではなく、社会的に“許されないこと”だったのです。



◎家族という小さな社会にあった「絶対的な序列」

親自身もまた、戦後の混乱期から「安定」「常識」「努力」を支えに生き抜いてきた世代に育てられました。
彼らにとって「親に逆らうこと」は、家族の秩序を壊す“裏切り”にも等しかった。
だから、子どもに「はい」と言わせることが、愛情の証であり、しつけの成功だと信じられていたのです。

とくに家庭内での序列は明確でした。
父親は権威、母親はその権威を支える存在、そして子どもは従う立場。

この三層構造の中で、母親自身が「反抗」を経験する機会を奪われてきました。
母親は父親に“従う”ことを求められ、娘は母親に“従う”ことを求められる。

こうして、上下関係が世代をまたいで継承される仕組みが、静かに固定化していったのです。



◎「和を乱さない」という無言の圧力

さらに学校でも、「和を乱さない」「空気を読む」ことが重視されてきました。
個の意見よりも、集団の調和が優先される社会。
その中で、「自分の感情を出すこと」や「違和感を表明すること」に対する強い抑圧が、
無意識のうちに刷り込まれていきました。

「空気を読む」ことが生きる術であり、
「我慢できること」が“成熟”と見なされる。
その構造の中で、反抗心や自己主張は、静かに消されていったのです。



◎子どもの反抗が呼び覚ます“抑圧の記憶”

だからこそ今の母親世代の多くは、子どもが感情をあらわにした瞬間に、身体が条件反射のように反応してしまいます。

「そんな言い方しないで」
「どうして素直に言えないの?」

それは子どもの問題ではありません。
自分の中にまだ残っている“抑圧の記憶”が疼いているのです。

自分がかつて飲み込んできた言葉。
封じてきた怒り。
納得できなかった理不尽。

それらが、子どもの反抗を通して再び呼び起こされている。
そしてその痛みこそが、母親自身の癒しと解放の入り口になるのです。




ここまで読んで、
思春期の反抗がただの反発ではなく、母親自身の心に深く作用していることに気づかれたかもしれません。

けれどここから先が本当の学びの始まりです。
子どもの反抗が母親の心に呼び起こす感情の正体や、その衝突をどう昇華させるかは、まだ多くが未知の領域です。

添付の記事では、以下の内容を丁寧にひも解きます。

・子どもの反抗が映す「母の抑圧された感情」の正体

・母自身が「遅れてきた反抗期」と向き合い、癒すプロセス

・反抗期を、親子双方にとっての「再生の儀式」として捉え直す視点



ここから先を読むことで母として、ひとりの人間として、静かに心を再生する方法が見えてきます。
どうかこの章を通じて、あなた自身の「声」を取り戻す一歩を踏み出してください。