思春期の反抗が母親に集中する理由
ワンオペ育児と社会の構造、母親が背負わされた重荷とは
思春期に子どもの反抗が母親へ集中するのは、育児の失敗ではありません。
ワンオペやメンタルロード(見えない家事・育児の負担)、父親不在、社会の理想像など、母親が背負わされてきた重荷の延長線上にある現象です。
子どもが思春期に入ると、それまで築いてきた穏やかな関係性が、まるで砂上の楼閣だったかのように崩れ去ることがあります。
向けられる強い言葉や態度に、「自分の育て方が悪かったのでは」と、母親は自分自身を責めてしまう。
しかし思春期の子どもの反抗は、母親の資質を測るものではありません。
それは出産から積み重ねられてきた、無数の重荷が一気に噴き出した結果です。
⸻
反抗期は「突然の事件」ではない|メンタルロードとワンオペ育児の延長線上
思春期の反抗は、突発的に始まった出来事ではありません。
それは母親が長年にわたり一人で背負ってきた、目に見えない「メンタルロード」という名の重圧の延長線上にあります。
メンタルロードとは、育児や家事において物理的な行動だけでなく、それに伴う思考、計画、調整、そしてそれに伴う感情的な負担の総体を指します。
子どもの提出物の期限を管理し、予防接種のスケジュールを把握し、病気になった際の看病計画を立て、友人関係にまで気を配る。
これらは日常の中で当たり前のように繰り返され、その重さが認識されることはほとんどありません。
そしてこのメンタルロードには、性別による不公平な前提が深く根付いています。
父親の育児参加が「やれる時だけでいい」と許容される一方で、母親は「やって当たり前」という、透明な首輪をかけられているのです。
この無言のプレッシャーが、母親をさらに追い詰めます。
こうした無数の労力が積み重なった先に、思春期の反抗期は訪れます。
そのため母親は「これだけ尽くしてきたのに」と打ちのめされ、自身の努力が報われなかったかのように感じ、自責の念を抱いてしまうのです。
⸻
強く当たられるのは「安心の証」|反抗期の心理学的背景
ではなぜ反抗の矛先が母親に集中するのでしょうか。
心理学の観点から見ると、子どもがもっとも怒りや不満をぶつけられる相手は、そこに「心の安全基地」が存在するからです。
人は、見捨てられるかもしれないという不安がある相手には、本音をぶつけることができません。
子どもが母親に矛先を向けるのは、「この人なら、何を言っても離れていかない」という確信があるからです。
この行動は、母親が長年にわたって築き上げてきた信頼という名の要塞の強さの証であると解釈できます。
⸻
家庭の構造と社会の理想像|父親不在と母親神話の重圧
反抗が母親に集中する背景には、母親個人ではどうにもできない構造的な問題も存在します。
本来、子どもの感情の受け皿は両親が分かち合うべきものです。
しかし父親の育児への関わりが不足している場合、その役割は母親が一手に担うことになります。
家庭のバランスが崩れ、結果として子どもの反抗的なエネルギーが母親に集中してしまうのです。
これは個人の努力の問題ではなく、家庭という構造の歪みに過ぎません。
さらに母親は社会から押しつけられる「母親神話」という不条理な理想像にも縛られています。
「子どもを第一に考えるのが母親の務めである」といった無言の期待は、母親に過度な自己犠牲を強います。
この社会的な圧力が、反抗期に直面した母親をさらに追い詰める一因となります。
⸻
思春期は母親の努力を否定するものではない
思春期の子どもの反抗は、母親が一人で背負わされてきたメンタルロード、家庭内のバランスの崩れ、そして社会が押しつける不条理な理想像といった複数の要因が絡み合った結果として生じます。
したがって反抗的な態度を向けられた際に、「私のせいだ」と自身を責める必要はありません。
思春期は、母親の成績表ではありません。
それは長年にわたる育児の努力が築き上げた、信頼の証であると同時に、社会全体が見直すべき課題を映し出す、痛烈な鏡でもあるのです。
🌱この記事を読んでくださった方へ
思春期の子育てを深掘りするnoteメンバーシップを始めました。
月額¥500で有料記事の大半を読むことができます。
現在投稿している有料記事も随時追加していきますので、安心して続けてご利用いただけます。
ご参加お待ちしています🕊️
