男の子と女の子
「理解できない」の質は違う
シリーズ『理解できないから始まる、思春期の子育て再定義』第2回
同じ“理解できない”でも、見えている景色は違う
前回の記事では、思春期の子どもを「理解できない」と感じたとき、それをなぜ親は自分の失敗と結びつけてしまうのかを掘り下げました。
しかし、この“理解できない”という感覚は、
男の子と女の子では質が異なります。
同じ距離感の変化であっても、親が受け取る印象や対処の難しさは、性別によってまるで違うのです。
その違いを知らないまま、「どうしてこんなに分からないのか」と焦るほど、子どもとの距離はさらに広がってしまいます。
1. 男の子──沈黙の中で試される「存在承認」
思春期の男の子は、会話量が一気に減ります。
昨日までの「学校どうだった?」に対する答えが、「別に」「普通」といった単語に変わるのは珍しくありません。
この沈黙を「拒絶」と受け取る親は少なくありません。
しかし多くの場合、それは感情表現のモードが変わっただけ。
言葉よりも行動や距離感で、自分の存在を示そうとします。
親にとって試されているのは、
「言葉がなくても愛されていると感じられるか」という存在承認の耐性です。
2. 女の子──会話は続くが、心の本丸には踏み込めない
女の子は、思春期に入っても会話が途切れないことがあります。
しかしその中身は、友人やSNS、外部世界の出来事に偏り、本音や深い感情は徐々に親から離れていきます。
さらに、女の子は感情の起伏を親にぶつけてくることもあります。
そのとき、親は「こんなに話してくれるのに、なぜ分からない?」という矛盾に戸惑います。
実際には、会話の量と親への信頼はイコールではありません。
「話している内容の質」をどう見極めるかが鍵になります。
3. 親が混乱しやすいポイント
✅男の子の場合:沈黙=拒絶ではないのに、孤立と誤解しやすい
✅女の子の場合:会話量=理解できていると錯覚しやすい
この性差を理解していないと、
男の子には過干渉、女の子には過信という形で、
それぞれ逆方向の関わりすぎが生じます。
4. 「理解できない」の正体を性差で分解する
性差による発達の違いを踏まえると、
理解できない理由が明確になります。
✅男の子:非言語化・行動化が進むため、情報量が減ったように感じる
✅女の子:感情の外部化が進むため、情報は多いが核心は隠れる
つまり、同じ“理解できない”でも、情報の減少なのか、情報の過剰と空洞化なのかで本質が違うのです。
5. 親が取るべき態度
✅男の子には「沈黙を許容する」
無理に言葉を引き出そうとせず、隣にいる時間の質を高める。
✅女の子には「会話の量より深度を見る」
事実報告ではなく、感情や価値観について尋ねる。
どちらも共通して大切なのは、理解できない自分を責めないこと。
その上で、「理解しよう」とする姿勢ではなく、「承認しよう」とする姿勢を軸に据えることです。
あなたが見ているのは距離か、それとも質か
思春期の親子関係は、「距離があるから分からない」と思い込みやすいものです。
しかし実際には、距離ではなく“質”が変わっている場合がほとんどです。
もし今、あなたが感じている理解不能感が、
沈黙なのか、外部化なのか、そのどちらなのか、
性差というレンズを通して見直してみてください。
問い
あなたが「理解できない」と感じているのは、
本当に距離ができたからですか?
それとも、見方が変わっていないだけではありませんか?