離れることに、抗わない強さ

「自立のとき」に問われる、親の覚悟と成熟



なぜ、寂しさの裏に“怒り”が生まれるのか?


子どもが親から離れていくとき
それは、生きる力を育んできた証であり、子育ての集大成ともいえる瞬間です。


けれど、多くの親はこの“自立”を素直に喜べません。

「口数が減った」
「家にいなくなった」
「何を考えているかわからない」

そんな変化に戸惑い、やがて怒りや失望にすり替えてしまうこともあります。


そのとき、問うべきは子どもではありません。
親である自分の内側に、「なぜ、それほどまでに抗いたくなるのか?」という問いを差し向ける必要があります。


本稿では、子どもの自立を喜んで受け入れるために必要な「親の強さ」とは何かを、
深層心理、家族力動、発達的観点をもとに紐解いていきます。



第1章|「手放せない親」に共通する3つの錯覚


1|自立=親離れではなく、「親が子から降りる」こと


「子どもが親離れしようとしている」というのは、一面では正しく、しかし本質的には逆です。

本当の自立とは、
親が子どもに対する“親であること”を少しずつ手放していくプロセス。


親の内面がそれに抗うとき、子どもの自立は「裏切り」に見えてしまいます。
それが、怒りや干渉、過干渉という形で現れます。



2|「まだ必要とされたい」という依存心

子どもの反抗期や距離を取る態度に対して、
「まだ私を頼ってくれていいのに」と感じるとしたら、それは愛ではなく、依存です。

「子どもが親を必要としない時間が増えること」こそが健全な成長であるにもかかわらず、
それを“不安”と感じる親は、知らず知らずのうちに子どもの自由を奪い始めます。



3|「失われる存在」として子どもを見てしまう

子どもが離れていくとき、
それを「喪失」として捉える親ほど、子どもを“所有物”として扱ってしまいます。

大切なのは、「役割を終えていくこと」への耐性を育てること。
子育てとは、自分の存在を必要とされなくなっていく過程を、いかに清らかに見送れるか──
その覚悟を試される営みなのです。



第2章|なぜ「喜んで手放す」ことが、愛なのか


子どもは「依存」を断ち切ることで、自己を確立する

思春期の「冷たさ」は、親への反発ではなく、同一化の終焉です。
これまで親を模倣して生きてきた子どもが、
「私は私である」という自己確立に向けて、心理的な距離を必要とするのです。

このとき、親が「離れたくない」と感じてしまうと、子どもはその“情の重さ”に窒息し、「罪悪感」や「自己否定」を抱えることになります。


真の愛情とは、子どもを「私から解放すること

親の役割の本質は、
「子どもが自分を必要としなくなっても、愛し続けられるか」という一点にかかっています。

求められないこと。
相談されないこと。
心配しても、感謝すらされないこと。

それらすべてを受け入れ、祝福し、なお愛せるか。

ここに、親の“成熟”という問いが立ち上がります。



第3章|「離れることに抵抗しない」ための3つの視座


1|親も「一人の人間」に戻る準備をする

親業とは「役割」であり、永続的なアイデンティティではありません。
子どもが成長していくように、親もまた、“親役”から卒業する時期が来るのです。

子どもが離れていくとき、
「私は誰かの母(父)である前に、どう生きたいのか」を見つめ直す必要があります。



2|「関係の質」を変化させていく

子育て初期は、管理や世話が中心の関係性です。
しかし、自立の時期には“精神的なつながり”へとフェーズを移行させる必要があります。

命令や心配ではなく、尊重と信頼。
必要なときだけそっと現れ、
そうでないときは「見守るという愛情」を差し出す。

それが、親としての新たな愛の形です。



3|「去られる痛み」に向き合う

子どもが離れていくことは、ある種の喪失体験です。
しかしこの痛みは、成長の通過儀礼でもあります。

ここで親が問われるのは、
「子どもの人生を、親自身の人生の延長線に置いていなかったか」という問いです。

子どもはあなたの夢でも、完成形でもありません。
彼らはあなたを踏み台にして、新たな道を選ぶ存在です。

その自由を喜べる親こそが、
“本当に子育てを終えた”親なのです。



「離れても愛している」と伝える強さを


子どもが自立するとき、
必要なのは「引き留める愛」ではなく、「背中を押す信頼」です。

親が自分の不安や寂しさに負けず、
「離れても、愛している」「むしろ、離れていけるあなたを誇りに思う」と伝えられるか。

この言葉を本心から贈れるとき、
子どもは“離れても孤独にならない強さ”を持って巣立っていくのです。


あなたは、「離れること」に耐えられますか?

その痛みの先にこそ、
本当の親子の絆が宿るのかもしれません。




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