「揺れ」と「ブレ」は違う


―母親であることの葛藤を、正しく理解するために




母親という役割には、多くの感情が伴います。
喜び、愛しさ、不安、焦り、自己嫌悪――。
これらは決して特別な感情ではなく、母親という立場に立った誰しもが、日々の中で何度も経験するものです。


けれども、その感情の動きが大きくなるとき、私たちはふと立ち止まり、こう思ってしまうことがあります。


「私、ブレてるのかな……」
「こんなんじゃ母親失格なのかもしれない……」

そんなふうに自分を責めそうになるときこそ、立ち返って考えてほしいのです。

あなたが今感じているのは、“気持ちの揺れ”ですか? それとも、“軸のブレ”ですか?

この二つは、似ているようでまったく違います。




 気持ちの揺れとは何か



“気持ちの揺れ”とは、一時的な感情の波です。
子育て中は特に、想定外の出来事や子どもの反応、予期しないストレスによって、心はしばしば揺さぶられます。

 • 子どもが思うように動いてくれない
 • 自分の時間がまったく持てない
 • 他の家庭と比べて自信をなくす

こうした状況に置かれれば、誰だって心は揺れます。落ち込んだり、イライラしたり、涙が出たりするのは、“正常な感情反応”です。


むしろ揺れがあるからこそ、私たちは見直し、修正し、柔軟に対応することができるのです。

ポイントは、揺れても、最終的には“自分に戻ってこれる”ということ。
嵐が過ぎれば、また軸足を地に下ろせる感覚があるなら、それは“揺れ”の範疇です。




ブレとは何か



一方の“ブレ”は、もっと根本的な問題です。


それは感情の話ではなく、「自分が何を信じているのか」「どんな母親でありたいのか」といった、行動や判断の“軸”が曖昧なまま、外部に翻弄されてしまっている状態を指します。


・SNSの育児法を見ては、やり方をコロコロ変えてしまう
・他人の意見に強く影響され、自分の考えを持てない
・何が“正しい子育て”なのか分からず、常に不安


これは単なる感情の揺れではなく、「私はどう在りたいか」という土台が不在なことによる不安定さです。


つまりブレとは、“自分の姿勢”に関わる問題なのです。




揺れていい。でも、ブレすぎないこと。



母親であることは、常に正解のない問いに向き合い続けることです。

だからこそ、揺れることを恥じる必要はありません。
「泣きたい」「迷っている」「ちょっと疲れた」――そう感じるのは、母として真剣に向き合っている証拠でもあります。


しかし、その感情の波に飲まれて、“誰かの正解”を生きようとし始めると、あなたの軸は徐々に崩れ始めます。

母親として、自分自身の感覚や価値観を見失ってしまったとき、そこには「自分らしさ」ではなく「他人らしさ」に染まった育児が残ります。




自分の軸を育てるために



ブレを防ぐには、「何を大切にするか」という自分なりの軸を持つことが必要です。
これは、最初から明確である必要はありません。
毎日の揺れの中で、少しずつ浮かび上がってくるものです。

たとえば

・「子どもが安心できる家でありたい」
・「完璧じゃなくていい。でも誠実でありたい」
・「“ちゃんとする”より、“一緒に笑える”を選びたい」

それは、あなたの言葉であっていい。
マニュアルではなく、あなたの人生経験や価値観から導き出されたものであることが、何よりも大切です。




終わりに:揺れながら、母になる



母親は「揺れない存在」であろうと努力しがちです。
でも本当は、揺れながらも、自分の中心に戻る力を育てていくことこそが、“母になる”ということではないでしょうか。

ブレずに生きるために、揺れは必要です。
そして、揺れの中でこそ、私たちは本当の自分に気づくのかもしれません。

どうか、あなた自身の“揺れ”を否定しないでください。
それは、母として、そしてひとりの人間として、成長していくための大切なプロセスです。