卵巣の摘出手術は
開腹形式

息子の出産が
帝王切開だったので
流れは大体分かっていた

大きな違いは
通常の帝王切開なら
傷口を最小に
そして
目立たない様に
下着で見えなくなる位の位置を
横に15cm位切開するが
今回は
胎児が居るため
おへそから縦に
20cm位切開した

お腹の子は
ずっと元気で
胎動もしっかり感じ
手術後も
手術室から病室へ戻るときには
いつもの様にお腹の中で
元気に動いていた


手術での入院
そして
術後から出産まで
胎児の成長に
万全を期す生活を通し

わたしは
自分が執着し
「わたし」というものを作り上げていた
沢山のものを
ひとつずつ
手放していくことになった…

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何も出来なくなることに
自分の存在価値が
無くなることを
重ね合わせては
その恐怖に怯え
ただただ もがき
それでも何かを纏おうと
必死になってきた

「こんなはずじゃなかった…」
「どうして私ばっかり…」

悔しさや
辛さや
自分を責める
そんな感情はきっと

「何かが出来ないと
自分に価値は無い」
そんな思い込みが正しいと
更に思い込むための幻想で

ずっと私は
この幻想に翻弄され
苦しみ続けて来たんだろう


辛いのは嫌だし
我慢するのも嫌だし
人に頼るのも嫌

そんな自分の弱さを
感情に翻弄されながら
弱さを埋め合わせる
「何か」を新たに纏うかたちで
乗り越えることが
自分が求めるものなのか

本当は
どんな弱さがあっても
価値は変わらないことを
知りたい
感じたいだけなのに

弱さで価値が変わることを
前提に
新たな強さを求め
いくつも鎧を纏っていたら
いつまで経っても
本当の自分の価値を
信じられる現実は
創れない


ただ
弱い自分に
差し伸べられた手を
素直に掴めば良い

無理に強さを求めず

手が差し伸べられるのを
待てば良い

そして
もう既に
差し伸べられている手に
気付けば良い

そうすれば
弱くても大丈夫なんだと
自分で自分を信じれる
そんな現実が現れて…

そして
その安心感こそ
本当に手にしたかった
強さへの
糧になるんだ