とある国の話。その国には王様と王女がおり、めでたくその間に娘が産まれました。二人はその娘を可愛がり、二人で娘の名前を授けました。
そして娘は美しい姫へと成長していきました。王女の美貌とはまた違う美しさです。まだ幼さの残る初さもあり、王女のような堂々たる風格はまだ持ち合わせてはいませんでした。
ある日、王女が寝付けず夜風にでも当たろうと寝室を出たところ。姫の部屋から声が聞こえてきます。もう夜も遅いだろうにとこっそり部屋を伺い注意しようとしたところ、部屋には王様と姫がいました。
それはまさに閨の伽。王女は我が目を疑いました。王、むしろ自分の夫が娘に手を出すなんて思いもしませんでした。激昂した王女は部屋へと入るのでした。
部屋に入るやいなや王女は二人に怒りの言葉を投げつけました。すると姫は「ごめんなさい」と淡々と謝りました。あくまで淡々と。その言葉だけですむ筈の無い王女はまだ怒りの言葉をぶつけます。こうなると王はただ見ているだけです。
そして姫はそんな王女に苛立ちを覚え、
「こうなったのも貴方のせいよ?
私達に恋愛感情なんてない。
ただ私がここにいただけ。
貴方にそんな暴言を吐かれる必要は私にはない筈」
と本音を吐くのでした。
その言葉に更に憤慨した王女は姫を部屋から追い出し、王と二人で話をするのでした。王はそこで娘に手を出したのを自分の言葉で認めました。そして、この後王女は王を国外へと追放するのでした。
王女は姫も国外へ追放したかったのですが、姫は国に未練がありました。自分を可愛いがってくれる民、その民を捨てることが姫には出来ませんでした。だから追放を良しとしない。この事を世間へ明るみにしてはならない、王女は姫の存在を赦せませんでしたが、王と姫が一緒に姿を消すのは民が不安になるだろうと、姫を国に残すのでした。
しかし、姫の王女に対する態度は閨の一件から普通の親子関係を築けない状態になっていました。王女も姫を一人の女として見るようになってしまっていました。
いつしかお互いに距離を取るようになってしまい、二人の関係は国内戦争へと発展していきました。どちらがこの国に残るのか、それだけの戦争です。
その戦争に終りはないかもしれません。もしかすると終わるかもしれません。そして引き金を引くのが王女とも姫とも限りません。もしかすると二人が望む決着すらつかないかもしれません。
おわり。