私の好きな作家に宇江佐真理がいる。彼女の「髪結い伊佐次」シリーズが好きだ。

舞台は深川で、廻り髪結いと同心の小者をかけもち、辰巳芸者のお文を連れ合いに持つ伊佐次。

このお文が話す深川言葉がいい。伊佐次に必ずかける言葉が、

「まま食ったかぇ」と「おぶう飲むかぇ」だ。

ままとはおまんま、つまりはご飯のこと、おぶうとは白湯も含めたお茶のこと。

一見、幼児言葉にも思えるが、私は温かさを感じて好きだ。今では年寄りですら使わない言葉のようだが、こういう言葉がなくなってしまうのはさみしい。