　猪苗代湖畔の長浜の近くに、かつて小説家後藤宙外が住んでいました。後藤は「会津節」という代表作以外にも、「名倉山」という小説集を残しています。

　後藤はその小説集の「序」において「予聊(いささか)思ふところありて、去る明治二十四年五月東京の寓を撤して、岩代は猪苗代湖の西岸、戸の口の寒村に居を卜してより、昨年十二月中旬鎌倉に徒(うつ)るまで凡そ七箇年。彼處に在りて長短二十餘篇の作あり。今その中の九篇を選みて、一巻と爲す。題して名倉山といふものは、此の山近く一湾の水をへだてゝ我が門にあたり、温藉(おんせき)の姿、特にめでたく、日夕これに親める七春秋。彼の山、彼の水、我に於いて因縁まことに浅からず。因ってその名を假りて紀念とするのみ」と書いています。

　そんなことを考えながら、ネットで「名倉山」を検索しながら会津の地酒「名倉山」を飲んでいます。後藤の文章を口ずさみながらの久しぶりの酒はうまく、わずが一合でも酔ってしまいました。

会津の地酒「名倉山」と小説家後藤宙外