ダブル

山口よしのぶ

白泉社 ジェッツコミックス

全2巻

1巻発行日 2001/5/5

 

まずは1巻の書影を見てもらおう。

 

 

キスをする直前のシーン。しかもこの先、妖艶なエッチに突入しそうな雰囲気。タイトルだって「ダブル」だし、濃厚な絡みのあるラブストーリィなのかなあ? と、普通は考えるよね?

 

実際はどうかというと、アクション&サスペンスの漫画。

 

本日のダブルと称する日替り2品しか出さない居酒屋。主人は天使を名の一部に持つ元刑事。同じビルでキス占いを営むアンジェリークは元天使を自称する美女。この2人の天使が事件を解決する。


ところでこの占いで交わすキスが凄く気持ちいいんだそう。しかも見料3000円。美女と気持ちのいいキスで、これは安い。でも、さっき違うオッサンとキスしたかもしれないその唇が、今、自分の唇に触れているとか考えたら、ちょっと遠慮したいかなあ。

 

さて、この店のメニューがどうして日替わり2品だけかというと、「小さい店だし、本当に美味しければそれで十分」という理由らしい。仕事帰りにちょっと喉を潤して、というには、確かにそれくらいがいい感じだけど、さて、中身はどうだろう。

 

ある日のメニューは、「エビのしそ葉あげ」と「インゲンの白酢あえ」。

またある日のメニューは、「鶏肉の竜田焼き」と「そうめんとナスの炊き合わせ」。

そしてまたある日のメニューは、「鮭のムニエル」と「キュウリのカニ詰め」。

 

悪くない。でも、グルメマンガの範疇に入るほど、たくさんの「本日のダブル」は登場しなかったな。たくさんのメニューの中から客が適当に2品を注文するという前提で、「たくさんのメニュー」を作品内で提示する(例えば、壁にお品書きを書いた紙がズラリと貼ってあるなど)より、その日その日で、「これが本日のダブルです」と登場させるほうが、作者の知識とセンスが問われるだろうから、ハードルの高いやり方ではあるよね。

さて、物語の主軸は、この店主、真田天使とアンジェリークの活躍。
患者を実験体としか思っていない悪徳医者や、新興宗教を隠れ蓑に陰謀を滾らせる団体などと対峙する。真田は元は優秀な刑事である。

また、キス占いの実態は「占い」ではなく、キスするだけで全てが読めるという能力らしい。真田も元刑事で、当時の警察仲間と付き合いは続いていて、頼まれごとなどもされている。

 

さらに公安特殊部隊esなども登場して、風呂敷が広がりすぎてしまった感がある。

多分、公安特殊部隊などはもっと後で出てくる予定だったんが、2巻で終了となったため、一気に用意していたクライマックスに話をもっていったんじゃないだろうかと勝手に思っている。なので、印象としては、「本編がはじまらぬまま終了」といった感じを受ける。

 

旅系の作品が目立つ山口先生だけど、刑事もの・サスペンスもの・謎解きものがやりたかったんだろうなあ。「オサムシ教授の事件簿」という作品があり、これが面白かったんだよ。

 

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