モンキーマジック
アキヨシカズタカ
少年画報社 ヤングキングコミックス
全2巻
1巻発行日 2003/6/15

 

『モンキーマジック』1巻

 

バイクショップ「ホワイト・フェザー」店長の孫娘、白羽根雪(ユキ)。彼女は今日も祖父が経営する店でバイクいじりに熱中している。彼女の目下のテーマは、原付(49CC)バイクを、セッティングや部品の工夫で、いかに速く走らせるか。

 

72CCのバイクを駆る孔雀院七華は、ユキに一瞬とはいえ並走それたことが悔しく、「ボアアップしてるでしょ」と因縁をつける。だが、ユキはそんなことはしていない。繰り返しになるが、彼女が挑んでいるのは、モンキーという原付(排気量50cc未満)バイクをチューンナップして、いかに速く走らせるか、である。


時速120キロで高速を駆け抜けたモンキーがあるという伝説に挑戦する者達のストーリー。作品の中には、「ここをこんな風に改造して」とか、「どの速度域で最も性能を発揮するようセッティングするか」とか、そういうことが頻出する。

 

エンジンや部品の図解などもあるから、最初のうちは「ああ、なるほど」が、そのうち「理屈はわからないけど、そういう手の入れ方をすると良いのか」になり、やがえ、「何を説明されているのかさっぱりわからない」になってくる。

 

理解できるのは、とりあえず絵空事でもなく、チートでもなく、ちゃんと物理法則に則って、非力な原付バイクが早く走れるようになるのね、ということだけである。ともあれ、熱意は伝わってくる。読者としてはそれで十分ではある。

 

プロの整備士であるユキの祖父は、彼女が試行錯誤するのを横目で見ながら、実はわかっている正解を、あえて教えずにいる。自分自身で見出すことこそが、彼女の成長につながると信じているのだろう。ライバルやバイク仲間と共にユキの「伝説のモンキー」への挑戦は続く。

 

それはともかく、最終回の扉絵が「免許取ったヨ」と免許証を掲げるシーンだった。おいおい、これまで無免許だったのかよ!

 

ユキが中学生という設定は比較的早いうちに出てくるから、「ん? 免許はどうなっているのだ?」とは思っていた。でも、1年休学して海外にいたとか、中3とかなら免許のとれる年齢になっていても、作品の中の設定でいかようにもなる。まさか、本当に特殊事情のない中学生で、無免許だったとは。

 

近所の人の目がある中、彼女がぶんぶん走りまわっているし、なんなら近所の人たちは温かい視線を彼女に向けるなどもしているが、これはちょっと、「う~ん……」だ。中学生が無免許でバイクを乗り回すことに苦言を呈したいわけではない。そんな無茶をしなくても、「高校生」という設定にしておけば、それだけで済んだことなのに、どうしてこんなことになってるんだろう、という素朴な疑問である。

 

 

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