地獄少女
永遠幸(作画) 地獄少女プロジェクト(原作)
講談社 KCなかよし
1~4、9巻
1巻発行日 2006/1/25

 

テレビアニメで偶然観て、そして、引き込まれた。

 

黒をベースにした画面に、カラフルな原色の花模様が鮮やかに浮かぶ。それはまるでカラー影絵を観ているようだった。

 

いくつかの定番のフレーズにも、心惹かれた。

「いっぺん、死んでみる?」とか、

「人を呪わば穴ふたつ」とか。

 

初期の頃はフレーズに揺れが見られるが、徐々に定番のものになってゆく。

僕が初めてテレビで観たときは、定番に落ち着いた後だったと思う。

 

「闇に惑いし哀れな影よ。人を傷つけ貶めて、罪に溺るる業の魂……。いっぺん、死んでみる?」であり、

「わたしをよんだわね。……この糸をほどけば契約は成立。憎い相手はすみやかに地獄に流されるわ。ただし、人を呪わば穴ふたつ。怨みを晴らすかわりに、あなたの魂も死後、地獄におちることになるわ」

 

システムとしては、こうである。

午前0時にインターネットで地獄少女のホームページ「地獄通信」につなぐ。午前0時でなければつながらない。そこで、怨みを晴らす相手の名前を書く。

すると、地獄少女が藁人形を持ってやってくる。藁人形の赤い糸をほどけば、契約は成立する。

 

地獄流しのシーンも美しい。

地獄少女閻魔あいが手漕ぎのボートに恨まれた人物を乗せており、ギイ、ギイと船をこぐ音が流れる。そこはおそらく三途の川なのだろう。

そして、多数のゆらめく蝋燭の火のひとつが消える。命の火が消えたことを象徴している。

 

最近のアニメでは、「ゆるキャン△シーズン3」の背景(風景画)の強烈なクオリティーに圧倒されるが、そういう「とことん手をかけた」クオリティーというのとは違い、「地獄少女」は画面の多くを占める「黒」と、その中に鮮やかに浮かぶ原色の対比の美しさに目を奪われた。黒と原色を組み合わせたらそうなるというものではなく、これはセンスの一言に尽きる。選び抜かれた和柄や、葬式をイメージさせる画面も良い。

 

それで、「原作漫画」はいかなるものであろうと手を出したのが、本作である。

だが、漫画は原作ではなかった。元々はアニメオリジナル企画で、アニメ放映に先立って漫画連載が始まったようである。いわゆるメディアミックスの企画だったようだ。

 

ちょっとイメージが違うなと感じたのは、きっと「なかよし」連載の少女漫画としてコミカライズされたからであろう。「ハルタ」に画力の高い作家によって漫画化されるべき作品だったのではないかとか、ストーリー展開も「学園もの」から離れて、もっと多様な登場人物が地獄に流されるべきだったのではないかとか、そんな風に感じる。



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