未亡人登山
板橋大祐
小学館 ビッグコミックス
全2巻
1巻発行日 2019/10/16

 

が山で出会ったのは、登山に相応しくない服装の女性。

余計なお世話かもと思いながらも、山で事故やトラブルにあってはいっけないと、「その服装ではやめておいた方がいい」と忠告する。しかし、その女性は「夫が待っておりますので」と。なにか事情がありそうだが、俊はせめて「自分の予備の服があるかあるから着替えてもらえないか」とお願いをする。「この山は、世界で一番、人が死んでる山なので」と付け加えた。

 

これが「未亡人登山」の第1話である。話タイトルは「谷川岳」。

そうなの? 日本の谷川岳が世界で一番、死人の多い山なのか!

確かに、谷川岳に登る人は多いもんな。エベレストの比じゃない。

 

下山途中だった俊だが、話の成り行き上Uターンをして、未亡人である椿の谷川岳登頂に付き合った。そうして事情を知るのである。

 

彼女は旦那が生前登った山を、残されたメモを頼りに巡ろうとしている所だった。
1人登山を旨とするだが、その椿という女性に請われて、同行して山の指導をすることになってしまう。そして、回を重ねるごとに心の中を見せ合うようになる二人。

 

うっすらと物語の記憶が何かと重なった。

そうだ、「春の呪い」だ。

妹が亡くなり、姉は妹の恋人と一緒に、妹と彼がデートした場所を巡っていた。

 

「未亡人登山」と「春の呪い」は、男女の違いはあるが、いずれにしろ僕には理解しづらい行動である。なにしろ相手の心の中には、自分ではなく、亡き人が棲みついている。しかも、「春の呪い」の彼氏は男としてのスペックが非常に高いし、「未亡人登山」も、こんなにカワイイ女性なのである。

 



ましては、「登山は単独」で楽しむ人である。何のチャンスもないのに、請われるままにお付き合いをするなんて、どうかしている。

しかしは、ある人の指摘で椿のことが好きなのだと気付く。だが、どうしようもない。椿はまだ故人である夫を愛しており、は改めて椿のことを「山仲間」と自分に言い聞かせるしかなかった。


そしてついにメモに残された山を訪ね尽くした。

最後の山で、椿のススメで、気持ちを解放する。そして、大泣きするのである。

それが夫を失った悲しみなのか、もっと違う気持ちなのか、それは示されていない。

泣き止んだ彼女は、「私はこれからもちゃんと生きていくからね。あなたの分も精一杯生きていくからね」と宣言するのみである。

 

こうして、2人が一緒に登山する理由は無くなった。

そして、2人の気持ちがどうなってゆくのかは、示唆だけはされるものの、この後のストーリーは読者の想像にゆだねられる。「未亡人登山」完結巻。

 

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