無敵道
楠本哲 玄秀盛監修
少年画報社 ヤングキングコミックス
全9巻
1巻発行日 2005/11/15
新宿歌舞伎町。「弱者救済」「トラブル請負人」「無敵堂」の看板をあげている男、堂本零時。デリヘル嬢を呼んでは乗り逃げするとか、救済の依頼には膨大な報酬を要求するとか、すこぶる評判は悪い。
半年前、闇金の取り立てでボコボコにされている所を助けてもらったオサムは、その報酬500万円がまるごと零時への借金となり、これを返済するため、無敵堂で下働きをし、かつ他でバイトもして零時に貢いでいるのだが、その半年間、まともに依頼者の訪問はなかったと語っている。事務所の家賃も、零時のデリヘル代金も、オサムのバイト代が頼りなのだ。
今日も危うく「乗り逃げ」寸前、嬢のミルクちゃんが「若い衆に集金に来させる」と激怒して出ていく所にオサムが 出勤してきたものだから、彼はまんまとデリヘル代を払わされてしまった。
その日の夜、威勢良かったあのミルクちゃんが、顔を腫らして無敵堂を訪ねてきた。
嬢の立場の時は気丈に振る舞っていた彼女だが、実態は「芸能界デビュー」を謳い文句に騙され、風俗に落とされてしまっていたのだ。しかも最初は優しかった芸能プロダクションを語る男も、今や暴力による恐怖でミルクちゃんを支配。その結果が、ボコボコにされて腫れ上がった顔である。
彼女がなんとか用意した依頼料は50万。これを零時は「話にならない金額」だと、無碍に断ってしまう。
「お前の命の値段が、こんなはした金か」と。
そして零時は、依頼を受けない代わりに自由になる方法を教えてやる。
「その男を殺せ。運命を変えたいならそれくらいの覚悟をしろ」と。
それでどうなったか。
男を殺そうとした彼女は逆に取り押さえられてしまう。そして男は、「そそのかしたのはお前か!」と零時の事務所に怒鳴りこんできた。
ここまできたら、零時のペースだ。「俺のバックには」と暴力団の名前を出す男に、「暴力団の名前を騙ったらそれだけでブタ箱だ」と凄み、男が突き出した包丁を自ら握り、傷害罪を追加する。
結局、零時はミルクちゃんからの50万円は受け取らなかった。男から示談金をたんまりせしめるから、要らないというのだ。
これが第1話。基本的に物語はひとつずつ完結する。
1巻にはもう一人、零時に助けられたことがきっかけで忠誠を誓う男、ゴローが登場する。そして、零時がなぜ「無敵堂」などを営んでいるのか、過去の悲しい事件をオサムに語るという体裁で、読者に示される。
バイオレンスと暗闇の静けさが交錯する人の業の物語。
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