本気! 外伝 クジラ
立原あゆみ
秋田書店 プレイコミックス
全2巻
1巻発行日 2013/11/5
久慈雷蔵。クジラと呼ばれ、極道の業界でそれなりの地位にまで行ったようだが、今は隠退の身。本気(マジ)こと白銀本気とは、同じ界隈で知らない者同士ではなかったようたが、直接あいまみえたことはなさそう。作品内では、「陰ながら見守っていた」という設定になっており、本気本編(全50巻)でのエピソードを振り返りながら、クジラがそれをモノローグで語る。
総集編というほど網羅されているわけではないが、ぽつりぽつりと振り返るそのエピソードは、本気に夢中になった僕のような読者にとっては、どれもこれも懐かしい。本編を読み返した時、「あれ? ここはどうなったんだ?」と思えるような場所を、補足しているような風情もある。
過去回想シーンは、多分、本気本編のコピーを利用している。これは正解だ。鮮烈に焼き付けられたコマの記憶が、寸分たがわず登場するのだ。新たに描いたのでは、この湧き出るような懐かしさは無かったろう。
過去回想だけでなく、隠退したヤクザの日常も時折描写され、「新作エピソード」も披露されるが、大きくは展開しない。過去回想だけでは物足りないのではないかと考えた作者のサービス精神かなとも思う。
そして、この新作の一番の見どころは、食。いかつい顔でグルメを堪能するミスマッチなおっさん、それがクジラである。