迷い家ステーション
小山田いく
秋田書店 少年チャンピオンコミックス
全5巻
1巻発行日 1992/10/10

 

小山田先生は鉄道好きの漫画家さんだと認識しているが、鉄道を舞台にした作品はそれほど多くはない。むしろ、少ないといっていいだろう。「迷い家ステーション」はそんな作品の一つだが、しかし、鉄道ファン向けには描かれてはいない。鉄道に寄りすぎないように注意深く作劇されているように感じる。どちらかというと人間ドラマだ。

 

加えて、少年チャンピオン連載だからといって、子どもだけの世界観で構築されてはいない。むしろ、大人のドラマが多い。子どもも社会を構成する重要な一員と位置付けられていて、その子ども達に向かって、大人のドラマを理解させようとしている。

 

鉄道を舞台にしつつも取り上げる内容の幅は広く、社会派のネタもあり、広い意味で教育的な内容と言ってもいいかもしれない。

 

主な舞台は、ローカル私鉄(国鉄から切り離された第三セクター鉄道)の終着駅、迷い家。鉄道整備の腕がいいばかりに運転手になかなかなれない検修の堺と、駅長一家、そしてそれぞれの人生を背負った乗客たち。

 

国鉄から切り離されたといっても、令和の時代に語られるような「死に体」のローカル線ではない。終着駅の「迷い家」の一つ手前「虹湯」は、一大リゾート地であって、大勢の乗客でにぎわっている。まだまだ鉄道が明るい時代の作品だ。この鉄道会社には、毎年、新入社員だって入ってくる。

 

駅長一家の生業は、蕎麦屋。いわゆる委託駅である。高校生の娘と中学生の息子がいる。この2人の子供も駅に出入りしているが、駅員でもなければ、駅の仕事をする義務もない。だが、台風や事故などでてんやわんやしているときなど、炊き出しをしたり伝令に走ったりなど、社会を構成する一員としての活躍をする。でも、普段は子供っぽい無邪気さで、逆に足を引っ張ったりもする。

 

事件も起こるが、通常は1話完結のほっこり系漫画である。

 

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