おまかせピース電器店
能田達規
秋田書店 少年チャンピオンコミックス
全24巻

1巻発行日 1997/5/5

 

私の好きな漫画最上位グループに入る作品。本当ならベスト10とか銘打ってズラリと作品名を並べるといいんだろうけど、10作品に収まるのか、それとも10作品も選出できないのか、実は自分でもわからないから、そういう紹介の仕方はできない。困ったもんだね。でもとにかく、最も好きな作品群の中のひとつなのだ。

 

設定もキャラクターもストーリーも面白いのだが、あまり詳しく設定を紹介するとネタバレになりかねないし、などと思いつつ1巻から読み返してみると、実はさほどもったいぶらずに1巻から設定がバンバン紹介されていたことに気が付いた。読んでいくうちに僕が忘れていただけだったのだ。

 

場所は東京郊外の平凡な商店街のように思える。

そして、こう書いてある。

「1人の天才科学者が店を開いた。品揃え世界一。無いものはその場で作ってしまう技術力。人はこの店を「なんでも屋 ピース電器店」と呼ぶ」

年中ハッピを着ているデブひげオヤジ(ピース貫太郎)が、その「天才科学者」であり、長男のピース健太郎(中二・14歳)はその血を引く。


ここでは日々、機能満載だがどこか抜けてる製品が生み出され、その結果、ドタバタが巻き起こる。抱腹絶倒のギャグから本格SF、スーパーアクション、アットホームなお話にお涙頂戴もの、夢や希望を追うストーリー、職人魂が語られるような本格お仕事ものまで、様々なタイプのストーリーがてんこ盛り。

 

平凡な商店街が主な舞台だし、20ページ程度での1話完結だし、身近なところで話が終始しそうなのだけど、実際は壮大でダイナミック。同じ作者のさらに古い作品「ガラクタ屋まん太」の流れをくむ作品で、様々な発明品が登場する。

 

望みを叶えるための製品を産み出すから、「ドラえもん」や「キテレツ」と同系統で語られることもあるが、そちらはあくまでユーザーで、誰かが作ったり発明したりした道具に頼るというスタイル。一方、こちらはメーカー。自ら作り出す。この違いが作劇上どう生きてくるかというと、製品として次々改良されるという点である。では製品が改良されるとどうなるか? 物語がエスカレートするのである。

 

場所が商店街だから、ピース電器店の隣も、商店である。「たちばな青果店」という果物屋だ。両親と2人姉妹が住んでおり、妹が健太郎の同級生でガールフレンドの桃子である。ある日、たちばな青果店にネズミが出る。店主がピース電器のオヤジさん(貫太郎)に、桃子健太郎に、それぞれネズミ退治の機械を注文する。貫太郎健太郎は別個にネズミ退治の機械を開発して納品するが、お互いそのことを知らない。そして、どちらかの機械がどちらかの機械を退治してしまうという結果になる。退治された方の機械の製作者は、「ネズミが対抗してきて壊された」と勘違い、さらに強力なネズミ退治マシンを開発し、投入。もう一方の機械をこなごなに壊してしまう。こうしてお互いに機械の強化合戦が繰り返された結果、戦車のようなネズミ退治マシンを双方とも投入するに至り、店がぶっ壊れてしまう。

 

またあるときは、あまりにも多くの注文を受けて手が回らなくなり、自分たちと同等の能力を持ったロボットを製作することになる。そして、お客から受けた仕事はロボットに任せて、自分たちはやりたい仕事に没頭しようとした結果、そのロボットまでもが同じ思考をしてしまい、ロボットがロボットを作り、仕事は新しいロボットに任せて、「自分たちは本来やるべきことをやる」と職場を放棄。新しく作られたロボットもその繰り返しで、結局、仕事は全く進まず、大量のロボットが月開発ロケットを製作し完成させてしまう。

 

といった話が次から次へと繰り広げられる。

 

他の登場人物も紹介しておこう。まずピース一家。

妹の則子。ちょっとおませな10歳で、コンピューターに強く、大学に聴講にでかけたりなどもしている。弟の康介は8歳。とある理由で髪の色に特徴があり、それを隠すために常に野球帽をかぶっている。

そして、母親、幸子。電器店のおかみさんとしてしっかり店と家族を守っているのだが、元はアメリカの特殊部隊員で、格闘技のプロである。貫太郎とは、アメリカで知り合っている。当時、貫太郎はNASAの職員で、幸子は米軍の軍人だった。

 

先にも述べてあるように、貫太郎は天才科学者である。MITを卒業している。その時のライバルがで、何をしても貫太郎に勝てなかったのだが、現在は東電器の会長である。最初は「家電量販店」のように思えたが、国家事業などにも噛んでいるらしい。娘の麗子が社長で健太郎の同級生。なにかとライバル意識をむき出しにしてきており、東電器は支店を同じ商店街に出店、張り合っている。

 

さて、貫太郎はアメリカで活躍した科学者ということもあって、地球防衛軍から要注意人物としてマークされている。その地球防衛軍からピース電器監視の役割を与えられた女スパイが、向いのラーメン屋に下宿している月影アイ。またしても健太郎の同級生だ。アイはピース電器の秘密を探ろうと、夜中にこっそり忍び込むのであるが、特殊な訓練を受けているはずのアイをあっさり取り押さえたのが、幸子である。

 

この他にも、どこか変だが、愛さずにはいられないレギュラー、準レギュラー陣が多数いて、物語を盛り上げてくれる。ちなみに、この漫画は「サザエさん時空」である。なので、新学期を迎えても、学年は進級しない。

 

完結後も何作品か単発の続編が描かれているのだが、僕としては本格続編を期待している。

 

 

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