本気!(マジ)
立原あゆみ
秋田書店 少年チャンピオンコミックス
全50巻
1巻発行日 1987/2/15

 

本気! 番外編
立原あゆみ
秋田書店 少年チャンピオンコミックス
全3巻
1巻発行日 1994/8/30

本気2!
立原あゆみ
秋田書店 少年チャンピオンコミックス
全5巻

 

※ これ以降のシリーズは、別途記載予定

 

相当長いシリーズで、現在も最新作(本気!終章 火薬)が描かれている。

白銀本気(しろがねもとき。本人はマジと名乗っている)風組傘下の渚組の組員となったのは16歳の時。暴力団の一員になったというよりも、任侠の世界に入門した、という雰囲気で物語はスタートしている。中学生の時に同級生への殺傷事件がきっかけで少年院に入る。この時、本気はこの事件の背後にある真相を語らなかったために罪が重くなったのだが、それは、女性教師の名誉を守るためだった。

 

最初についた兄貴分桃次(ももじ)がチンピラの抗争で殺され、その上の立場にある山形の引退、経営する給食センターが食中毒を出したことで借金まみれになり家族が離散したことでヤクザの世界に流れ着いた父親のような年代の吉村のおっちゃんを弟分に持たされるなどがあり、若くしてシマを任されるようになる。

 

本気本人に、極道の世界を上り詰めてやろうなどという野心はないのだが、持ち合わせた男気と度胸、そして本気が最初に接した親分や幹部たちの影響も受けて、任侠や心意気といったことを大切にするようになり、多くの味方を得、同時に敵も作る。

 

上部組織である風組の大幹部である「草書の金バッジ」を得るまでになるが、あらゆる敵意から渚組に迷惑をかけないため、独立して組を張る。渚組の子分という意味もあって「子組」を名乗り、自ら組長となる。また、異なる系列である極地天道会系列の組でも、事実上の組長となる。

 

最終的には、極道のトップに君臨するような存在にはならないものの、全国の様々な系列の組織に本気のシンパが生まれており、本気が一声かければ全国の極道が動くような存在となった。しかし彼がそのようなことをするのは「動くな」という号令をかけるのみである。

 

女性関係は極めて大人しい。少年時代に水商売のお姉さんから誘われて、というシーンはあるが、それらを除けば「一筋」の姿が描写される。掲載が少年誌だったということもあるからだろうが、金についてもオンナについても、「自分がいい想いをする」ための行動というのは無い。ヤクザを稼業とする主人公に「正義」という表現は似つかわしくないが、本気は本気なりの正義感で行動をしている。だが、彼なりの「間違ったこと」に対する対処方法はヤクザのやり方であり、いったん熱くなった本気を止めることはできない。一の子分である阿比留次郎がようやくそれをできる程度である。また、走り出したら止まらない性格を本気自身がわかっており、チンピラに刺された時なども、「これでいい。これで終わる」という趣旨のことを語って、自分を刺したチンピラを褒めるシーンなどがある。

 

このように、どちらかというと「静かに収める」ことを旨とする本気の考え方は、上昇志向の強いヤクザや、ヤクザと適度な距離を保つことで美味しい汁も吸おうという警察にとっては邪魔な存在である。ヤクザと警察が結託しての本気潰しが行われることもある。


番外編は、本編が時系列で進むのとは無関係に、個別のテーマで描かれた「ある時点」でのエピソード。「本気2」は、「本気」の続編である。

 

最終シリーズでも、本気はおそらく全国のトップに立つことはないだろう。これをやると、同じ世界観で描かれている「仁義」シリーズの関東一円会という広域暴力団の上にも立つことになり、「仁義」シリーズとのバランスが取れなくなってしまう。また、本気もそのようなことを望んでいない。

そうした中で、本気の極道界での最終的な立ち位置がどうなるのか、最終章の結末を僕は待ち望んでいる。できれば「死」は避けてもらいたいところだが、可能性としては否定できない。

 

 

 

 

 

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