てっぺん
万里村奈加
講談社 KCミミ
全7巻
1巻発行日 1993/11/13

 

「トリリオンゲーム」と風味に共通点を感じる90年代の少女漫画。テレビドラマ化もされている。ドラマ好きの妻は、この「てっぺん」も、同じ作者の「白の条件」も楽しみに視聴していたはずだが、原作漫画には興味を示さなかったなあ。

でも、違う作品(タイトルは忘れた)は好きで読んでたみたいで、でも、「作者同じだよ」と言っても「あ、そうなの」程度。作家買いはしない主義なのだろう。

 

さて、「てっぺん」。舞台は4年後に中国に返還されるという香港。
香港の九龍城を追い出された仲間たちとともに、ボロアパートに住む天辺(まひる)が、ひょんなことから日本の商社で「てっぺん」を目指す。

 

日本人観光客の「置き引き」で生計をたてていた天辺だが、2度も同じ日本人に現場を抑えられてしまう。それが日本の商社、三星商事副社長の石井だった。天辺のことを「バカな中国人」とからかったことがきっかけで、天辺は実は日本人で、母親は加賀冴子だと告白する。その名前に覚えがあった石井……。

 

3か月後の三星商事のパーティーで、ぼろを出さずに淑女として振る舞うことができれば、三星商事に就職させてあげると石井はさらにからかう。加賀冴子という名前が彼女の口から出てきたのが、どこかで仕入れた情報によるハッタリなのか、何かのつながりがあるのか、それを探り出したいという真意があったようだ。

 

天辺は、運と努力と勘の全てを味方につけ、石井の課題をこなして、日本行きの切符をつかむ。ここまで60ページ弱。各話の切れ目を設けないスタイルで単行本の編集がされているのでわからなくなっているのだが、ここまでがおそらく第1話。

今の漫画は1ページ3段が主流だが、この作品は4~5段で情報量が多く、ページ数比でいけば話の展開は相当早い。だが、ストーリーがわかりづらいというようなことは一切なく、キャラのきっちりと描き分けられていて混乱をきたすこともない。

 

来日した天辺は、三星商事で「てっぺん」を目指すと宣言する。副社長室に招いた石井は、それならここ(49階)まで上がってこいと、最初の任務、社員食堂の建て直しを命ずる。社員食堂は地下1階である。

 

社員食堂を蘇らせた天辺の次の配属は1階。受付嬢かと喜んだが、配属されたのは清掃員。だがここでも、産業スパイをあぶりだす活躍を見せる。清掃員という身分は全室フリーパスのため、ことの真相にたどり着けたのだ。

 

その後も、アニメのビデオ映像化権の獲得や、景気減速で行き場を失ったジャンボジェット機の売り込みなどに成功し、ついに課長に。だが、与えられた部署は「余課」。本社ビルから追い出され、社員寮にしようと目論見ながら失敗したため廃屋と化したボロ屋に移動させられた。

 

自身が仕事を進めていく過程で培った人脈を生かし、やがて天辺は天辺商事を立ち上げて社長となり、アイディアと行動力で困難に立ち向かってゆく。痛快で読んでいて気持ちがいい。



1981