竜の住む国 美夢と魔夢
かづさひろし(作画) 辻真先(原作)
ラポート ラポートコミックス
全1巻
発行日 1987/11/25

 

辻真先先生による「あとがき」を読んで、「ああ、そういうことだったのか」と思った。元々の構想は漫画原作ではなく、コバルト文庫用の「剣と魔法の物語」であったのだ。しかも、硬派なファンタジーで、「大長編」になる予定だったとか。

 

だが、残念ながら頓挫してしまった。コバルト文庫からの発注が「Dr.スランプ」のノベライズだったからだ。どうしてそんなことになったかというと、「Dr.スランプ」のアニメ脚本を担当されていたからだが、こうして辻先生による剣と魔法のファンタジーは、小説化されることはなくなった。

 

かわりに、漫画として蘇ったのである。

対立する2人の夢から、それぞれ誕生した、美夢魔夢。悪政に苦しむ庶民。正義を気取る大泥棒。大地を覆いつくす木々の精霊ともいうべき存在であるナジュ。老齢となった鳥が霊力を身につけ人の姿となって表れたサトリ。竜を使役して暮らす国が舞台のファンタジー。

 

ヤッカ国の国王ヤハトは、平和主義者。将軍セグロは、隣国の王タカゴが若年のうちに叩いておくべきと考えているが、ヤハトは動かない。そうこうするうちに将軍セグロタカゴ側に寝返り、ヤッカ国は滅び、庶民は圧政に苦しむようになる。

 

ヤッカ国の滅亡の際に逃げ出したのが、王子のナルミと、夢の国の住人、ミム(美夢)である。ミムは国王ヤハトと、やはり夢の国の住人アムとの間にできた娘であり、ナルミミムは腹違いの兄妹のような関係である。この2人は国を復興させるためにタカゴセグロと対立することになるのだが、敵国の王タカゴにも、夢の国の住人がついていた。それがマム(魔夢)である。

 

特殊能力は、精霊的な存在であるナジュサトリ、そして夢の国の住人であるマムが使える。同じく夢の国の住人であるが、ミムはその能力を覚醒していない。

 

といった物語なのだが、実は展開が早すぎて、ついていくのに少し苦労をした。

元が大長編ファンタジーの構想だったからであろう。ひとつのコマの中にあらわされている世界観や状況説明がどうしても多くなってしまうからだと、今は解釈している。しかも、元が小説用のプロットである。文字を追っていれば、状況を見落とすことはない。でも、仕上がった作品が漫画であれば、早い展開のために見落としてしまったりもしていたのだろうと思う。

 

コバルト文庫だったら、多分、3冊分くらいにはなるのではないだろうか。

さらに、また別の国なども登場して、続編も期待できたようにも思う。

 

まあ、そうとは知らずに辻先生著作の「小説 Dr.スランプ」を僕は所有してるし、なんなら「小説 ルパン三世」も持っている。ついでに「ガラスの仮面殺人事件」(これは装丁が花とゆめコミックスにそっくり)も手元にある。残念ながら「正義の味方 仮面ライター」は蔵書にない。

 


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