You're My Only Shinin' Star
高河ゆん
講談社 パーティーKC
全1巻
発行日 1991/5/23

 

1冊で完結しているお話ではあるが、なかなか複雑な設定。

 

未来もののSFでは、西暦ではなくて、〇〇暦という独自のものを使うことが多いように思うけど、ここでは西暦19899年。当然、人類の科学とか文明とかはものすご~く進んでいて、全部の不思議は、数値と理論で解明されている。

究極に達しすぎたそれは、「魔法」と呼ばれている。そして、それを使いこなす人を「魔導士」という。

 

え? じゃあ、科学じゃあなくて、やっぱり魔法の世界なの????

 

でも、その魔法を使いこなすためには、いくつもの公式を組み合わせて使う必要がある。ということは、やっぱり科学?

でも、その魔法を強化するために、「歌」を利用する。例えばそれは、「今日の日はさようなら」なんて歌だったりする。

2万年近い未来まで、この歌、残ってたんだ……。

 

月には、月星人がいて、月の地下で暮らしている。地球人はそのことに気づいていなかった。そこで、なんだかものすごく強力な爆弾を月で実験したら、地面も簡単に素通りしてしまう放射線のようなものがバラまかれて、月星人のほとんど、99%以上の人が死滅してしまった。

残った月星人は、地球人への報復のために、テロ活動を開始。

 

これは物語の主な流れではなく、あくまで背景。

 

月星人(少女)であるレンは、地球の大魔導士であるイマームに直接会って、自分の記憶を盗んだ彼から、取り返そうと決意していた。そのために、宇宙港へ急いでいるところだった。そこへ、地球にいながら魔法で幽体離脱したイマームが現れ、レンを襲おうとする。

 

ここで言う襲うとは、地球へ来て自分に危害を加えるかもしれないレンをやっつける、という意味ではなく、惚れた女を押し倒す、という意味である。この時の台詞がひどい。「いいんだよ、もう、何したって。君なんか処女じゃないんだから」である。

 

でもまあ、作品の発表年を考えたら、そんな感じだったかもしれない。「いいわよ、別に。処女ってわけじゃないし」的な女の子の台詞はいくつもあったし、「やんないの? あんた、童貞でしょ?」みたいなオマケまでついてたっけ。はいはい、どうせ僕は童貞ですよ、みたいに当時の僕は劣等感とか抱いたりしたものだ。

 

いや、自分の話はどうでもいいのだ。それより、もっと漫画の中の台詞を紹介しよう。医者の台詞であるが、なかなか衝撃的である。

「命はなによりも、すべて投げ出しても、守る義務がある。金よりも愛よりも正義よりも大切だ」

 

「金」とか「名誉」とか「地位」などを引き合いに出して、「命」はそれらより大切という主張は多くある。「愛」や「正義」は、「命」と同じ側にある「大切なもの」として扱われる。

 

けれど、正しいものとされている「愛」や「正義」を引っ張り出してきて、「命」はそれよりも大切だ、という主張は、僕はこの他に一つしか知らない。シンガーソングライター沢田聖子さんの「息子からの伝言」という歌だ。「信頼」「情愛」は失っても取り戻せるが、「命」は失ったら取り戻せないと歌う。

 

あ、また沢田聖子さんのことを書いてしまった。だって、ファンなんだもの。

 

さて、「You're My Only Shinin' Star」だが。

ものすごく遠い未来を舞台にした、SFファンタジーラブコメ。

そう、ラブコメであることが大切なのだ。

 

それはそうと、この作品には、「Kウイルス」というものが登場する。空気感染する非常にヤバイやつで、薬は8千万円する。(なんと、通貨の単位が円である)。

また、地球はそうとうくたびれていて、大きな地震が頻繁に起こる。発展しきった科学の力(魔法の力)で、それを今まで押しとどめていたのだが、そのせいでもう限界に達している。あとは壊滅を待つだけ、みたいな状態になっている。

 

そのとき、人類の選んだ道は?

 

最後の最後には、「禁止されている魔法」を使う。それは、未来を透視すること。

その結果、ハッピーエンドになる、とだけ書いておきましょう。

 

古い作品なので、ひと昔前なら、平気でネタバレ書いてたんですけどね。

意図的なネタバレということではなくて、ラストまでのあらすじを語ったからこその感想とか、あるじゃないですか。でも今は電子で古い作品も読めるし、それが作家さんの収入にもつながるので、このへんにしておきたいと思います。

 

(漫画所持作品リスト 1663)