CIPHERサイファ
成田美名子
白泉社 花とゆめコミックス
全12巻
1巻発行日 1985/7/25

 

赤ん坊の頃から双子の弟とモデルをし、7歳で子役デビュー。高校進学を期に弟のサイファは芸能界を引退したが、兄のシヴァは俳優活動を続け、美術学校に進学。美術学校には、将来の画家やダンサー、ミュージシャンや俳優などを志す若者が集まっているが、シヴァは既に名の知れたアクターである。17歳。高身長でハンサム。どこの血が混じっているのかわからないところが神秘的でもあり、女子学生に「んー、オリエンタル」などともいわれている。陸上の記録保持者というから、運動神経も優れているらしい。

 

自己表現の舞台は違えど、学生たちはそれぞれの道で一人立ちしたいと自分磨きを続けている仲間たちではあるけれど、シヴァだけは近寄りがたいオーラを放っていた。

 

そんな彼にアニスは、「友達になりたい!」と、正面突破を図り、見事知り合いになる。「単なる友達でいいんだ」とクールに返すシヴァに、アニスは「友達ってのは人間に対する最高の尊称だ」と熱弁するが、「初対面で最高の尊称をいただけるかどうかはわからない」と、シヴァはあくまでクールだ。

 

そんな彼女がある日、忘れ物をシヴァの家に届けに行くと、そこにはシヴァが2人いた。その正体は、読者には最初に示されている通り、双子の弟、サイファである。しかもアニスは、この2人の秘密に気付いてしまう。

 

シヴァサイファは交代で外出し、学校に通ったり仕事をしたりしていたのだ。

 

これが軽いコメディであれば、そのことに起因してドタバタが発生し、でもバレたら困るという何らかのもっともらしい理由が設定されていたりするのだろう。そして、バレるかバレないかのギリギリのところで物語が展開することで、読者にハラハラドキドキをもたらす。

 

だが、この「サイファ」という作品においては、そうではない。もっと重いものとして扱われる。アニスはこの2人1役を「友達への裏切り行為」と断ずるのだ。しかし、2年にもわたる交代劇がバレなかったのは、「その程度の付き合いでしかないからだ」とシヴァサイファは主張し、アニスは「バレないように表面的な付き合いしかしてこなかったからだ」と反論する。そして、理由を説明しろと迫るのである。

 

その理由については、読者に明示されない。登場人物であるアニスと同様に、読者は「なぜ、そんなことを?」という疑問を抱くことになる。

 

理由を説明しなければ2人で1人を演じているという事実をバラすというアニスに、シヴァサイファは賭けを持ち掛ける。2週間以内に2人を区別できるようになれば理由を話すし、バラすのも自由。しかし、見抜けるようにならなかったら、二度と詮索しない。そういう賭けだ。

 

アニスは受けて立つが、数日して簡単には見抜けないことを悟る。そして、彼女がとった行動は、2人と一緒に暮らすことだった。おかげでアニスは2人を区別できるようになったのだが、わざと間違えて回答する。それは、「秘密を暴くようなことはしたくない。自ら理由を話してくれるようになるまで待つ。だって、彼とは友達になりたいんだから」という気持ちからだった。

 

人の事情や気持ちに土足で踏み込むということを思いとどまったアニス。これをきっかけに3人の関係は深まっていくが、その先には様々な出来事が起こる。

 

(漫画所持作品リスト 1562)