ももんち
冬目景
小学館 ビッグスピリッツコミックススペシャル全1巻
発行日 2009/5/5
美大予備校生、岡本桃寧の、浪人時代を描いたふんわり優しくちょっと一所懸命な物語。季節ごとに1話、2度目の春までの全5話。
夏樹と由芽は、同じ高校だったのか、それともこの予備校の現役生対象の講習会で知り合ったのか、昼休みなどは桃寧は一緒に過ごしている。作品中では定番の3人組。
桃寧には兄と姉がいて、2人はよく美術予備校に通うために住み始めた下宿先のアパートにやってくる。この日は桃寧の誕生日だった。桃寧自身がそのことを失念していて、兄姉の訪問に驚く。自身の誕生日を忘れることなんてそんなにないと思うが、それほどふんわりした女の子として描かれている。
女子3人組と兄妹3人。それぞれの会話の中で、桃寧のキャラクターを浮き彫りにしてゆくという手法。
予備校に助手としてやってきた現役美大生に、桃寧はちょっとした恋心を抱くが、彼の個展が開かれているアトリエを訪問して、どうやら彼女らしい人と一緒にいるところを目撃する。あっという間に失恋だった。
各話タイトルは、次のとおり。
1.春と桃
2.夏の家族と新しい友達
3.秋の別れと謎の女子
4.冬のランナー
5.春の別れ
作者あとがきによると、目指したのは70~80年代の少女漫画なのだそう。
少女漫画は全く読まないわけではないが、本当に「ほんの少し」だけしか読んだことがないので、その狙いが成功しているのかどうかは僕にはわからない。今も「きみの横顔を見ていた」「詩歌川百景」「ミステリと言う勿れ」「七つ屋志のぶの宝石箱」の4作を継続して買っているだけで、この中に「これぞ少女漫画」というものが含まれているのかどうかもわからない。
桃寧の恋愛の方はその後、美術予備校で松本君という男子と仲良くなるが、本人も「恋人になりたい」とか「大切な人」といった意識は、物語の最後の最後に自覚するに留まるから、その後の進展はわからない。わからないけれど、進展を予感させるちょっといい感じの終わり方ではある。ちなみに、桃寧を含む女子3人と松本君はみんな大学には合格している。
この作品は、カラーページもステキ。各話冒頭の4~8ページがフルカラーで、その色彩はポップでカラフルなものではなく、浅葱だの萌葱だの鶯だの石竹だのと表現される日本古来の色を意識的に用いたのであろう落ち着いた色合いだ。
カバー絵(こちらは日に焼けてしまってますが)のあとに、カラーページもちょっとだけご覧いただこうと思います。
(漫画所持作品リスト 1522)