アコニー
冬目景
講談社 アフタヌーンKC
全3巻
1巻発行日 2009/3/23

 

外見が14歳のアコニ・ランチェスター。実は10年ほど成長が止まっている。それは10年前のとある出来事が原因らしい。やがて空木基海(男子中学生)とともに、その秘密をさぐる行動に出る。この部分については、「謎解き」というか「サスペンス」というか、そういう色彩を帯びたストーリーなのだが、彼女が父親と住む築80年の「しきみ野アパート」は、建物自体が意識を持っているため「古いからといって解体できない」状態らしく、住人もなぜか魑魅魍魎。こちらの部分はホラーというかオカルトというか、そっち系列だ。

 

アコニーは小説家の父(外国人だが、日本人名のペンネームでホラー小説を書いている)と二人暮らし。母は日本人で、とある出来事以降、失踪中。アコニーと父は、母が日本にいると信じており、母と再会するために日本にやってきて、暮らしている。

 

ここに基海が住むことになったのは、母子家庭である彼の母親が海外赴任することになり、祖父が長年住んでいるこのお化けアパートの空き部屋に、移り住むことになったからだ。祖父とは別の部屋での生活だが、食事などは祖父の部屋で一緒にとる。

 

アコニーによると、彼女以降の新たな入居者は基海が初めてで、敷地内に入れたこと自体、「アパートに認められたから」だという。

 

アコニーの父のもとには、編集者が原稿の督促にやってくるくらいだから、それなりに売れているらしい。その女性編集者は、担当した作家は原稿を落とさないことで有名な、とても有能な人とのこと。仕事ができるだけでなく、スーツとヒールが似合う身なりもしっかりした美人OLだ。彼女もこのアパートの住人で、休日はジャージで過ごしており、基海は最初、そのジャージ姿に敏腕美人編集者と同一人物とは気づかなかった。オンオフの落差が激しい模様。そして、その正体は、どうやら蛇らしい。彼女も魑魅魍魎な住民の一人だったのだ。

 

それにしても、このアパートはすごい。現れたり消えたりする扉の向こうには座敷童がいるし、管理人はわけあって成仏できなかった幽霊だし。その他に、カエルにされた武士とか、何人にも分身してしまう男とか、色々住んでいる。アパートの一部が壊れたりすると、アパート自身の意思で自然再生してしまったりもする。でも、アコニーの秘密は、科学的なものであったりもするのだ。

 

この頃の冬目先生は、いくつかの作品を新連載しては休載というのを繰り返していたのだけれど、後に全ての作品を完結させている。休載後、復活再連載の機会がなく未完のまま放置せざるを得ないということも少なくない漫画業界だけど、全部ちゃんと完結してるって、すごいなと思う。

 

(漫画所持作品リスト 1517)