バターナッツ
犬上すくね
小学館 サンデーGXコミックス
全2巻
1巻発行日 2014/10/22

 

藍河りょう(18)は、人生のピンチに陥っていた。ぴっかぴか1年目の女子大生。下宿先ではルームシェアをする予定だった。ピンチの中身は、ルームシェアの相手が男だったことである。


相手の名前は柿山千聖。その名前から女性だと思い込んでいたのである。そして、千聖もまた、りょうをその名前から男だと思っていた。(シティーハンター?)

 

恋人でも何でもないのに男女が同居する羽目になるというありがちなコメディーだが、面白いのが「最悪の事態を回避する」手段が、どんどん閉ざされてゆくところである。事前に冷静に対処していれば、勘違いを防ぐことができる要素は、実は双方ともにあった。だが、お互いにそれをスルーしていたから、どちらかに責任転嫁をすることもできない。キャンセルして出ていくには、新たな住処を段取りするほどのお金はりょうにはい。若くて可愛い女の子が同居人になるなんて、男からしたらウハウハなはずだけど、千聖にはそうしたくない理由がある。すぐにでも追い出したいところだが、彼にもお金がない。(千聖は先住民で、同居人が出て行ったので、新たなルームシェアの相手を探していたのである。なぜなら、そうしないと家賃が払えないからである)

 

おまけに。

そう、おまけがつくのである。

千聖りょうが成り行きで入ったサークル活動、自主映画を作る「映画サークル」の先輩でもあった。ここに来て、大学も一緒、サークル活動も一緒、住むところも一緒、でもお互い毛嫌いしていて気も合わないという、頭を抱え込みたくなるような大学生活がスタートする。

 

テーブルもガスレンジも冷蔵庫もテープで2分割し、お互いの領域を侵さず、生活にも干渉しないというクールなルールを作るが、洗濯カゴに何気なく放り込まれていた千聖のパンツを一緒に洗ってしまうなどのハプニングまで起こる。


いや、ハプニングというより、ここまでくると「うっかり」が酷すぎる。そもそも男女の勘違いも、二人ともまとめって「うっかり」していたことが原因なのだ。

 

2人の同居は、隠し通すつもりが一部のサークルメンバーにはすぐにバレてしまい、サプライズで訪ねてきたりょうの姉にも知られてしまう。両親には内緒にしててくれるとのことだが、秘密の同棲ならともかく、ここまでギクシャクしてて、やっていけるのか?

 

でも、そんなこととは関係なしに、映画の製作は進んでゆく。そう、これはギクシャク同居コメディーであると同時に、自主映画を作り上げてゆくサークル活動のお話でもあるのだ。

 

(漫画所持作品リスト 1343)