美咲の器ーそれからの緋が走るー
あおきてつお(作画) ジョー指月(原作)
集英社 ジャンプコミックスデラックス
1巻
発行日 1999/6/8

「緋が走る」の後日譚である。

美咲は緋を走らせることに成功はしたものの、ごく身近な人にしかその事実を知らせなかった。


この続編で師匠の斎藤も指摘しているが、陶芸家としてはまだまだ未熟なのに、「緋を走らせることに成功した」となればそこで認められてしまい、成長がそこで終わってしまう。技術を高め完成させた器にこそ緋を走らせなくてはならない。このことを、美咲自身が一番良くわかっているのだ。


その美咲が、女流陶芸家50人に選ばれ、九州湯布院で実施されるコンクールに出ないかと誘いが来る。世界的に有名な陶芸評論家である海野陶子による選で、人間国宝より権威があるなどと言う人もいるほどらしい。


だが美咲は、最初は出場を辞退する。にも関わらず、出場を余儀なくされる出来事が起こる。これはなんとしても美咲を出場させたかった者によりあらかじめ仕組まれていたことが物語終盤で明かされる。


萩まで訪ねてきた海野に厳しい言葉を浴びせられたこともきっかけとなり、美咲は出場を決意する。しかし、作品を見た海野は逆に美咲に失望を伝え、こんな作品を出品したなら目の前でゴミ箱に捨てると言い放つ。実際、大会前に作品を持ち込んだ美咲の目の前で、海野はそれを床に落下させて壊すのだった。


コンクール開催までに、新たな作品を焼かねばならない。美咲は間に合うのか、また、今度こそ認められるのか?


といった展開だが、結局、美咲はこのコンクールで優勝する。あえて結果を書いたのは、こんなものはネタバレでもなんでもないからだ。


「予選落ち」にすることだって、作者の思惑ひとつだ。だが、大切なのは、コンクールの結果ではない。その結果に至る過程や、そこに乗せた作者の想いこそが、作品を味わう上で大切なことだと私は思うのだ。


また、師匠の斎藤美咲のコンクール出場にあたり、あるアドバイスをする。このあたりも僕にとっては見せ場のひとつだと感じた。美咲も成長するし、物語もそれて大きく展開してゆく。


そういうわけで、美咲は優勝するのだが、そこへの道筋を存分に堪能させてくれる作品なのだ。


コミックスも巻数表示の無い単巻。「続きが読みたい」という声援に応えたものと思うが、美咲の進むべき道(緋を走らせるにふさわしい美咲の器を完成させること)が示され、これで完結かとったらいつのまにかさらに続いて全9巻。


(漫画所持作品リスト 1292)