パチスロひとり旅ホームレス
奥田渓竜(作画) 名波誠(実話提供)
白夜書房 白夜コミックス
全1巻
発行日 2007/11/11

 

ギャンブル依存症の話でもないし、スロプロの自慢話でもない。各種スロットが出てくるから、その特徴とか攻略法っぽいものはあるけど、あくまで人生ドラマ。

 

証券会社では自腹で客の損失補填をさせられたり、転職先では給料の未払いがあったりで、まともでない会社を選んだのは本人の責任もあるかもしれないけれど、あまりにも理不尽。膨れ上がった借金の額は、今更普通のサラリーマンをしたところで返せない。カードローンとサラ金での返済額は月々20万。この他に生活費もかかる。

 

筆者は家を引き払って中古車を買って居室とし、パチスロで借金返済をする道を選ぶ。

 

ハローワークでは、定まった居住地がなければ失業手当を出せないとそっけない。

親でも友人でも適当な場所に住民票をおかせてもらえば話は簡単なのに、それをしない。ハローワークでの応対に対しても「まともに働く気がないのに、失業手当をもらおうなどと、ずーずーしい」と自らの行動を自分で非難する潔さ。こういう男だから、運命が好転するのかもしれないね。

 

旅打ちを続けるうちに、さらに困ったことがおこる。会社をやめて住居も引きはらったことが、カード会社やサラ金にバレたのである。通常なら、約束通り返済をしていたら、また追加で借りることができる。だが、住所不定無職では、それができない。

パチスロ放浪旅はそれなりにうまく行き、借金返済は順調ではあった。しかし、パチスロはギャンブルである。負けが続くこともあるし、タネ銭が無くなることもある。そういうときは追加で融資を受けないと打てない。だが、「住所不定無職」では、新規借り入れができないのだ。

 

抱えた借金を返すために選んだ道が「まとも」でないのは認めるが、これはあまりにも酷い仕打ちだ。


さて、そんな困難も乗り越えつつ、パチスロによる借金返済だけでなく、人生をも切り拓くことをしてしまう。PCは処分せずにおいており、無料Wi-Fiの使える所で、せっせと結果をレポートしていたのだ。

 

これが雑誌編集者の目に止まり、こうして作品になることになった。

作家というまともな職業が降ってきたのである。

 

出たの出ないの、リーチ目がどうだの、攻略法がどうだの言ってるだけのパチスロ漫画とは一味も二味も違う人生ドラマ、参考にはしたくないけど、まあ面白い。



(漫画所持作品リスト 1180)