ワイルド7R(リターンズ)
望月三起也
実業之日本社 マンサンコミックス
全2巻
1巻発行日 2012/1/4

 

ワイルド7のリーダー飛葉への新たな指令は、護衛だった。

関東の地方鉄道、海岸電鉄が運転士の居眠りによるスピードオーバーでカーブを曲がり切れず脱線、社長は鉄道会社を売り払い、その金を遺族への支払いに充て、お詫び行脚を続けている。その護衛である。

お詫び行脚になぜ護衛が必要なのかというと、ある一人の刑事のカンだった。支払いのための現金を元社長が持ち歩いているから、というのもあるが、事故を起こした運転士はベテランで居眠りなどありえない、調査の結果、機械的な故障もありえない、だからカーブに差し掛かる直前に運転士が意識不明になるよう仕組んだ連中がいるに違いないと、その刑事は睨んだのだった。

 

飛葉は護衛に助手を求め、その助手となったのが、不良少年Aを名乗る大悟である。殴り込みをかけてきたヤクザを、改造モデルガンで4人もケガをさせた傷害の罪で逮捕されている。護送の途中で出くわした銀行強盗で、膠着した場面を打開するきっかけを作ったものの、それで障害の罪が許されるわけもない。だが、飛葉の助手になれば、不問に付すといわれ、いわば取引に乗ったのである。

 

その銀行強盗の現場で、最終的に突入して事件の収束を図ったのが、ワイルド7の連中だった。その時、飛葉が「悪党は退治」とつぶやき、問答無用で射殺をする現場を、大悟は目撃している。

 

その時大悟は「逮捕じゃなくて、退治?」と違和感を抱いているが、悪人をその場で殺すことを認められた超法規的警察官7人のチーム。それこそがまさにワイルド7である。

 

常に過酷な任務を課され、殉職につぐ殉職。初期オリジナルメンバーはもはや飛葉しかいない。ワイルド7シリーズでの殉職者は40人程度はいる。

 

新作のワイルド7である「ワイルド7R(リターンズ)」では、チームの司令官である草波検事は代替わりして息子になっており、飛葉にしても元々は少年院時代にスカウトされたのだが既にオヤジの年齢になあっている。一時期は体内に不発弾を抱えていたり、片足を引きずって歩いているなど、ヨレヨレな状態で任務を遂行するなどがあったが、現在は回復している模様。そして、大悟のことを「昔の自分のようだ」と感じているようである。

 

「ワイルド7R」は全編書下ろしで、当初は巻数表示の無い単巻作品だった。

ストーリーはラスト近くで複数のどんでん返しを読者は食らうが、複雑というほどでもない。複雑ではないが、アメリカ国防相総省の兵器課次長が温泉で行方不明になり、帯同していた屈強なガードマン6人が殺されるところからスタートする。ここに銀行強盗、鉄道の事故、さらに京都の上水道に毒がばらまかれるといったテロまで全てがひとつにつながってゆく。絵がまた凄い。バイオレンスアクションのイラスト集としても楽しめる。

 

「濁流の古都」という章タイトルがついており、「1」巻には巻数表示がないが、最初から続編の構想はあったように思う。事実、その後「2巻」が発行されている。1巻に名前付きで登場するワイルド7のメンバーはベンケイデンポーのみ。あと、ドラキュラ風の男が登場するが、すぐに首をちょん切られている。

 

が、ラストに近いシーンで、メンバー7人が勢ぞろいしてバイクで出動するシーンには登場しているので、首をちょん切られたのは、敵を欺くために事前に用意されていた人形だろうか?。また、このシーンには7人が描かれているが、そのうちの1人は大悟である。ワイルド7はこれ以前にも、殉職で欠けたメンバーを補うかのように、正式加盟前に候補になりそうな人物が行動を共にしていたことはしばしばあるので、いずれそういう流れだったのかもしれない。

 

また、1巻のラストでは、敵役だった女スナイパーに、「その力を正しい方に使う気になったら連絡をくれ。メンバーとして喜んで迎え入れる」と飛葉は伝えている。

初期作品でも、ユキという女性が、7人とは別にワイルド7とともに活躍しており、その後、一時的にメンバーになるなどがあったので、やはりこれも続編を構想してのことだろう。

 

僕とワイルド7との出会いは、「少年キング」である。

当時、少年キングで人気を二分していたのが、この「ワイルド7」と「サイクル野郎」であり、正直、ワイルド7にはそのとき、興味を示せなかった。なにぶん1話が長く、しかも刑事もの(?)であるため、途中を読んでもさっぱりわからないのである。その点、サイクル野郎は「旅もの」なので、前後がわからなくても楽しめる。

 

その「ワイルド7」が最終回を迎え、「サイクル野郎」も終了、新たに人気を誇っていた「銀河鉄道999」もブームの中で連載を終え、かろうじて「超人ロック」が後継誌「少年KING」に引き継がれた形だった。一番好きだった「サイクル野郎」だけが復活を果たさなかったのは、なんとも複雑な心境ですが。

 

ワイルド7は何度か復刻をしているが、集めようと決意したのに全巻発行されるまでに頓挫するなどしており、ようやくぶんか社の文庫版で、「新」「続・新」「飛葉」「ロゼ・サンク」などを集めることができた。それでも、オールカラー版やイラスト集など、収集できていないものもいくつかある。

 

そんな中での「リターンズ」の刊行開始、しかも初期版の雰囲気を漂わせており、大いに期待したのだが、作者他界により3巻が出ることはなかったのである。

 

(漫画所持作品リスト 1173)