capeta
曽田正人
講談社 KCデラックス
全32巻
1巻発行日 2003/10/17

 

仕事が忙しく、なかなか父にかまってもらえない平勝平太。小学4年生。母は既に亡い。拗ねることもなく、父に不満を言うこともなかったが、何かに本気になれるわけでもなく、腑抜けた日々を送っていた。そんな勝平太が唯一、興味を示したもの、それが車だった。

 

そんな息子のためにと、仕事を終えた後や合間に、父親が手作りして勝平太にプレゼントしたのが、廃材を使って作り上げたカートである。

だが、フレームは歪んでいてバランスもとれておらず、おまけにエンジンは農耕機械などに使うもののお下がりで、とてもスピードを争う競技で使える代物ではない。

 

にも拘わらず、勝平太は天才的なカンと思考で、カートレース場をなんとか走ろうとする。カートの極端な悪癖を熟知してからは、いわば不良品のカートで1周ごとにタイムを上げてゆくのだ。

 

その姿に目を付けたのが、カートチームの美人監督、源。もとはレーサーで、現在はカートチームを率いている。

彼女は勝平太に、「まともなエンジン」の提供を申し出る。ただし、条件付きである。その条件は、自分のチームに入ること。つまり、カートの提供もドライビングの指導も引き受ける、ということだ。渡りに船の話であるが、勝平太はそれを断る。

 

父親が作ってくれたカートで戦うのだ、と。

廃材を提供してくれたサーキットのオーナーや、カートの手作りを許可してくれた父親の職場である工場の社長、何かと応援してくれる友人たち、彼ら彼女らと自分は既にチームなのだ、と。

 

カーレーサー、平勝平太の物語は、こうして始まった。

目指すはF1である。

 

作品のあちこちに、「熱い想い」が迸る展開で、その部分には何度も激しく心揺さぶられたが、物語が進むにつれ、レースの展開と結果にシフトしてゆく。これは作劇上仕方のないことなのだけれど、後半では効果描写の多様と多用で「スピード感」の表現が僕にとって徐々に難解になっていった。いわゆる漫画の「読解力」が追い付かなくなっていってると感じたのだ。

 

これを感じ始めてから、自身の漫画の趣向も変わっていったように思う。

漫画上の動きの表現は、「その一瞬を切り取った静止画」にこそ、躍動感の全てがあるのではないかと思い始めたのだ。

 

(漫画所持作品リスト 1162)