ブラック・ジョーク
田口雅之
協力:小池倫太郎
秋田書店 ヤングチャンピオンコミックス
全11巻
1巻発行日 2008/10/5
 
アメリカ51番目の州、日本。カジノも売春も合法の娯楽特区「ネオン島」は、世界中からヤバイ連中が集まってくる。ラスベガス以上と評され、アメリカ本土から訪れる観光客も多いが、ヤバイ連中による裏稼業もはびこっていて、マフィアの抗争も絶えない。
 
そんなハードなネオン島で、日本人資本による唯一のカジノホテルがTD温泉ホテルだ。貫禄ある落ち着きは、実はただの冷酷さの発露でしかない社長の都々目から、やっかいごとの収拾を命じられた切れ者の吉良は、顔より大きな拳を持つ用心棒の小玉を伴い、あっという間にVIPルームで傍若無人に振る舞う連中を一掃する。いったん小玉が暴れれば死体の山が築かれるが、それらを無かったことにする一連の流れは確率しているようで、吉良は小玉に「掃除する身になれや」とはいうものの、殺人を咎めたりはしない。
 
イタリアマフィアの幹部、ランオーバーも宿泊しており、吉良と小玉が社長から次に命じられたのは、ランオーバーを狙う中国系マフィアの排除だ。
礼と美学を重んじ、信望も厚いランオーバーが、自ら暗殺者たちに手を下さず、ホテル側に始末を依頼したのは、殺し屋たちの並外れた体臭が苦手だかららしい。彼らに相対した吉良たちもその悪臭の酷さに顔をしかめるが、あらかじめランオーバーから「生死は問わない」というオーダーを受けていたため、ミンチにして海に沈めた。
 
この作品中、もっともカッコいい男だと私が思うのが、このランオーバーである。かつて襲われた際に足の機能を失っており車いすでの生活であるが、この車いすが戦闘用のもので、ハイテクを駆使して様々な武器が仕込まれている。ランオーバーがこれらを操作して、敵を次々葬り去るのだ。
 
他にも何人かの主要人物がいる。
まずは社長の用心棒である黒木あかりだ。美人ではあるが愛嬌がなく、ゴスロリ服に身を包み、しなやかな身体で忍者のような術を使いこなす。社長を守るというより、社長に忍び寄る脅威を実力行使で排除する。
 
吉良や小玉と海兵隊で同期だったアドミラルジョニーは、裏稼業を引き受けて稼ぐ流れ者のようだが、なにかとTD温泉ホテルと縁があり、成功とはいいがたいことも多く吉良からは「残念なやつ」と評されながらも、結果を出したり、出さなかったり。
 
初期はホテル内とネオン島が舞台の1話完結形式のB級アクションドラマだったが、徐々に活躍の場が広がってゆく。9巻発行以降ながらく止まっていたが、10巻が2022年、11巻が2023年に発行されて、完結となった。
 
(漫画所持作品リスト 1051)