魑魅(すだま)
小山田いく
ブッキング
全1巻
発行日2007/3/10

おどろおどろしいタイトルだが、カバーイラストを彩るのはどうやら普通の高校生の男女。でも、手に持っているものと、背景はやっぱりそっち系か? と思わせられる。なにしろ、小山田いく先生だし。

 

物語の主舞台は、高校の生物部。部長の東森覚(3年)と部員の専女摩未(1年)の二人きりの部活だ。生物部の地下室には多数のUMA(未確認生物)のホルマリン漬けが保存されている。猫又の足、河童、龍のウロコ、人魚のミイラ、人面痩、etc……。

 

前進である医大の研究室にあったもので、教授の個人的コレクションだったため大学が引き取らず、そのままになってしまったためらしいが、来歴は書き残されている。

 

そんな不気味な生物部だが、部長は変人でありながら優しい人と評されているようで、怪我や病気の小動物などが持ち込まれたりする。

ただし、本日の客は、ネコの死体だった。トラックに踏まれて原型を留めないその死体を整復してほしいという。生前の姿にして葬ってやりたいという2年女子、白河からの依頼だ。前足は潰れており整復のしようがなく、東森はホルマリン漬けの「猫又の足」を継ぐことにした。

 

持ち込まれたネコは白河が可愛がっていたもので、彼女に対するイジメがエスカレートし、彼女をイジメていた4人が、そのネコを走行中のトラックに投げ込んだものだった。東森によって形を整えられたそのネコを使って、白河の復讐が始まる。いじめていた4人組の1人が幻覚に誘われて遮断機の閉じた踏切に進入、電車に轢かれてしまうのだ。

 

人の心の闇が、人に人外の能力を与えてしまったという展開であった。

 

第2話は河童のエピソード。こちらはホラーでもなんでもなく、科学的に「そういうことだったんだ」と読者を納得させてくれる。しかも、病気の少年とその回復を願う母親の心温まる話になっている。

 

第3話はミステリー仕立て。人面瘡が主題だ。人面瘡だとされるホルマリン漬けを顔にぶつけられた女子高生の顔が、見るも無残に崩れてゆく。その裏に隠された犯罪が東森の手によって暴かれる。

 

13編収録、400ページ越えの1冊。

 


(漫画所持作品リスト 964)