魔球エース
庄司としお(作画) 辻真先(原作)
小学館 てんとう虫コミックス
2巻

発行日は本体に記載なく不明(多分、カバーに記載してあると思うのだが、カバーが無い状態で古書店で入手)

 

辻先生原作、庄司先生作画による野球漫画はいくつか存在するようだ。

私にとっては異例中の異例なのだが、原作・作画ともに作家買いをしたコミックである。

 

庄司としお先生は、少年キングで連載していた「サイクル野郎」に夢中になった。たまたま手にした少年キング、何の予備知識もない「サイクル野郎」。とても自転車が通れるような状態でない山道を自転車をかついで歩く主人公は、なぜかわからないがギターをかついだ外国人の金髪美女と出会う。ストーリー展開もわからず、まったく理解できないシチュエーション。まさしく意味不明とはこのこと。なのに、なぜか惹かれる。もっと知りたい、ちゃんと理解したいという欲求にかられる。こうした出会いが漫画雑誌を気まぐれに手に取ると、稀にあるのだ。

ところで、そのシーン。それは、知床横断道路開通前の、登山道しかない時代の、知床横断のための山越えの場面だった。

 

辻真先先生との出会いは、NHKラジオの「ラジオドラマ」特集の予告であった。そのドラマは聴いていないが、確かドラマ化されたのは「死体が私を追いかける」だったのではないだろうか。1週間の特集で、日替わりで作家が交代するのだが、どの作者も著名な人で、辻先生の名前だけは「小説家」として認識していなかった。

「あれ? この人、サザエさんの脚本の人だよなあ」と、思ったのだ。

小説も書いていると知り、それから作品を漁ることになる。「死体が私を追いかける」は、まさしくゆく先々で死体に出くわす。やっかいごとに巻き込まれたくないと隠したはずの死体が、全然違うところで、しかもこともあろうに自分の目の前に現れる。

このころすでに、ユーモアミステリーと称されていたように思うが、スラップスティックである。笑い転げさせてもらった。また、「仮題・中学殺人事件」の初期シリーズ3作は、天牛堺書店という新刊書店と古書店が合体した本屋さんで、両方のコーナーを行き来してまとめて揃えた記憶がある。

 

さて、「魔球エース」。小学生チームによる野球漫画で、小学〇年生に1年間(12話)掲載であるが、読んだことはなく、この両先生による作品だからということで購入した。1巻は未発見、未入手である。2巻だから、1年間連載の後半部分のみであるが、十分に堪能させてもらった。気が付いたら一生懸命物語の流れを追っている自分がいた。さすがに辻先生の原作だなと今なら感じ入るが、本を手に取ったときはそこまでは思い至らなかった。

 

全12話では単行本2冊に足らないので、1巻2巻とも後半1/3ほどを占めているのが別の作品、「どんまいキャプテン」である。僕が小学〇年生で1年間読んだのは、こちらの方だ。おそらく1巻には、1話から途中まで掲載、中間部分を大幅に未収録とし、2巻には途中からラストまで掲載という形であろう。

 

「どんまいキャプテン」も、「魔球エース」と同様に当時流行した「魔球もの」である。どんな魔球かというと、これである。

 

 

いや、さすがに、これは無い。

「侍ジャイアンツ」に「分身魔球」が登場したが、あれは一直線に分身しており、このように上下左右前後に分身するわけではない。

しかもこの球、キャッチャーはちゃんと捕球できる。ベンチから投球を見ていたチームメイトの証言も、「玉はひとつ」である。

 

ざっと検索してみたところ電子書籍にはなってなさそうなので、ネタバレをしておくと、「暗示」「催眠術」である。こんなことが小学生だけでできるわけがなく、我が子とそのチームを勝たせたい大人が、汚い手を使って(チンピラを雇って小学生を襲わせて暗示をかける、審判を買収して催眠術を発動させる、など)魔球を生み出していたのだった。

 

魔球の正体を見破った主人公チームは、「こんな汚い野球はする意味がない」と退場を促すコーチに、「大人は汚くても、俺たちの野球は本物」と、正々堂々と決着をつける宣言をしプレイを続行、見事勝利するというストーリーである。

 

(漫画所持作品リスト 956)


よーく調べたら、電子書籍になってました。

古書も流通してますが、プレミアついてますね。