ペリカンロード
五十嵐浩一
少年画報社 ヒットコミックス
全14巻
1巻発行日 1983/1/1

 

真面目で根暗(と、周りから言われる)渡辺憲一は高校1年生。唯一の取柄は、足が速いこと。同じ中学から進学した佐倉えみ子から、陸上部に誘われる日々。憲一にその気はなく、今日も執拗な勧誘にうんざりしていたところ、やはり同中の田川しげるに助けられる。しげるは底抜けに明るい性格だが勉強には興味がなさそうで、暴走族にも所属し、真面目一辺倒な憲一のことをからかいながらも心配していた。

 

しかし憲一も、こっそりバイクに乗っていた。公園の木立に隠した50CC。彼も勉強だけでは息が詰まると見える。だが、束の間のバイクを走らせる幸せな時間も、暴走族に絡まれて水をさされてしまう。そこを助けてくれたのが、900ccの大型バイク、深紅のBMWを駆るライダーだった。族連中はあっという間にけちらっされ、中には転倒させられる者も。

 

憲一の父は新聞記者で、その関係からか、ある日、憲一の家にプレスライダーが下宿人としてやってきた。プレスライダーとは、記者が取材した原稿をバイクを使っていち早く社に届ける仕事。当時はこの他に「電話送稿」といって、公衆電話から取材内容を伝えるなんてこともしていたらしい。要するに、携帯もネットも無い時代のシステムだ。

 

憲一の家にやってきたプレスライダーは、岡崎かな子。深紅のBMWに乗っており、憲一を族から救ってくれたその人だった。この日からかな子は憲一にとって、良き相談相手であるとともに、厳しい先輩ライダーとなった。

 

事故で壊れたバイクの修理のため、しげるのバイト先で憲一も仕事を始める。えみ子とその従妹の由仁子が偶然その店を訪れ、由仁子もまた憲一に興味を示す。アルバイトにバイクにと時間をとられ、成績の下がる憲一。おまけにクラスメイトの佐倉えみ子が彼に寄せる想いにも心を揺さぶられる日々。しげるが「気晴らし」にと貸してくれた中型バイクでぶっ飛ばして帰ってくると、しげるはボコにされていた。憲一に貸したバイクは暴走族の先輩に黙って借りてきたもので、リンチされたあげく族も追い出されてしまった。

 

「先輩とはケリがついたかもしれないが、1年生の間では挨拶が済んでいない」と、族に所属する同級生の清水にいちゃもんをつけられたしげるは、バイクにオイルをかけられ、火をつけられてしまう。駆け付けた憲一は、そのバイクを救おうと飛び乗るが、既に火はついており、バイクの爆発と巻き添えを避けるため、憲一はバイクごと池に飛び込んだ。

 

これがきっかけで、憲一としげると清水は、たった3人で、暴走族ではないバイクチームを立ち上げる。しかし、彼らを見る回りの目も、他の暴走族からも、憲一たちは同類としかみなされず、他校のチームとの抗争や、すでに解散しているものの禍根を残したOBチームの再登場、由仁子が所属するレディースのモペット隊などもからんできて、学園バイクものは時にシビアに、時にスラップスティックに、友情や恋愛をはぐくみながら、青春を展開させてゆく。

 

(漫画所持作品リスト 929)