家族八景
清原なつの(作画) 筒井康隆(原作)
角川書店 角川コミックスエース
全2巻
上巻発行日 2008/3/5

七瀬は相手の心が読める超能力者。住込の家政婦を職業とする彼女は、この能力を周囲の人に気づかれて、気味悪く思われたり、怖がられたりしないよう、長く1か所にとどまらないようにしていた。
 
七瀬が新たに仕えるのは尾形家。奥様の勧めで、夕食は2人だけで先に済ませる。主人が帰宅したのは11時。妻が七瀬を主人に紹介すると、主人が今までいた高級クラブの女たちと七瀬を、頭の中で比べていた。
 
夜遅くに娘が帰宅。どうせ男と遊んでいたのだろうと推測する主人は、娘が男に抱かれるシーンと、自分が愛人と交わるシーンを重ねている。
 
こうしたことが七瀬にはわかってしまうのだ。
 
転々とする仕事先で、七瀬はいくら表面を取り繕った家族であっても、全てを見透かしてしまう。
 
強烈だったのは、家族の留守中に七瀬をレイプしようとしたその家の主から逃れ、自分を守るために、七瀬が攻撃をしかけた第4話「水蜜桃」。男の感情を読み取って次々と口にし、男の本性をあらわにして、追い込んでゆく。

七瀬の能力を悟った男は、「何も考えるな。何もかも読み取られてしまう」と自分に言い聞かせる。だが、七瀬はさらに追い込んでいく。

「『何も考えない』なんて、人間にはできない」と追い打ちをかけるのだ。

ついに男の意識は崩壊してしまうが、そのシーンが凄まじい。「花岡ちゃんの夏休み」からは想像できない描写になっている。
 
清原なつの先生のファンは、絶対、読んだほうがよい。
 
上下2巻に全8編。
筒井康隆先生の作品としては、「七瀬ふたたび」の前作にあたる。
 
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