ぺろり! スタグル旅
能田達規
小学館クリエイティブ ヒーローズコミックス
全5巻
1巻発行日 2017/9/30

舞台になるのはJ2リーグ。だが、メインはサッカーではなく、スタジアムグルメ。漫画は架空のN2リーグとして描かれるが、モデルになっているのは全てJ2のチームであり、実在のスタジアムだ。だって、グルメと旅のレポートだもの。
 
そして、この作品は旅漫画でもあるのだ。といっても、ありがちな旅漫画とは異なり、ひっぱらない。限られたコマの中なのに情報はキッチリ。実に簡潔にわかりやすい。アクセスとその道程上や観光名所で主人公2人が旅を楽しむ様子が描かれる。
 
アウェイでの試合の応援のためにJ2チーム千葉ユニティの女子サポーターのハルさんとエリちんが各地のスタジアムに遠征するのだ。
 
二人の職業が紹介されていて、ハルさんは会社員、エリちんは団体職員。団体職員ってわざわざ書かれるの、珍しいよね。
試合を観に行くために有給とか半休とかベルさっさの場面があるから職業を明かしてるのかなとも思うけど、具体的に何をやってるのかはよくわからない。職場には理解してもらってる様子。
 
2人とも、そつなくかわいい系なんだけど、だんだん(ときどき)ギャグ顔に崩れてゆく。
 
さて、試合当日。スタジアムには数々の屋台が出る。いくらスタグル旅とは言っても全部は食べられない。そこで登場するのがハルさんの「いい顔探し」。いい顔をしておいしそうに食べてる人を探して、同じものをチョイスする。いい顔探しはこの漫画の売りシーンでもある。
 
紹介される交通機関も多岐にわたり、東京から岡山まで延々車を運転したかと思うと、鉄道も船も飛行機も夜行バスも登場する。能田先生はおそらく「乗り物」好きで、それは過去作「おまかせピース電器店」からもうかがえる。「6時38分ちょうどのあずさに乗って~」(めっちゃ語呂が悪いし、ちょうどでもない)とか、特急車内で歌い始めるシーンまである。う~ん、終始ハイテンション。
 
アウェイであっても地元の歓迎は熱烈で、「千葉サポさん、ようこそ、いらっしゃい」と笑顔で迎えられる。J2であるということも少しは関係しているのだろう。一緒になって盛り上げていこう、お互い昇格めざして応援しましょうという気持ちが満ちているのも、この漫画の気持ちいい部分だ。
 
ホームゲームなら絶大な応援が得られるのは当たり前。サポーターならアウェイにも遠征して、ガンガン応援しよう。そのための旅も、また楽しい。そう思わせてくれる漫画だ。
 
登場するのはいわゆるB級グルメになるから、メニューそのものはカレーだのおでんだの唐揚げだのヤキソバだの串焼きだのコロッケだの、馴染みのものが多い。けど、「そんなの知らねー」な地元グルメもあれば、「馴染みはあるけど、さすがの地元B級アレンジ」もある。これが楽しい。作風が常時ハイテンションなこともあって、心の底から楽しさを感じる漫画なのだ。
 
というわけで、サッカースタジアム巡りをすれば、すなわち聖地巡礼。
 
続編「あつあつ! スタグル旅」(連載中)は、J1スタジアムだよ!
 

 
裏面はこんな感じ。
あっちこっち行きますよーってのがしっかり主張されてる。
 
あずさはこちら。
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