TOGETHER!
中垣慶
少年画報社 ヤングキングコミックス
全2巻
1巻発行日 1993/1/15

わけあって放浪中の柴田勇樹が行き倒れたところを助けたのが、小さいながらもペットショップを任された早瀬幸。幸は21歳ながら、5歳の双子の男の子を育てるシングルマザーだ。ペットショップ「いぬい」の3階に住んでいる。「いぬい」のオーナーは別にいるのだが、店を彼女に任せて年中留守にしている自称「旅行家」だ。

幸が幼い頃からなにかと気にかけてくれているのが、地元のやくざ、巽組の親父さん。組長の屋敷には6頭もの獰猛な番犬がいる。幸に助けられた恩を返すため、勇樹はペットショップの手伝いをするのだが、巽組の獰猛な番犬たちがなぜか勇樹には従順なため、勇樹は巽組の親父さんに気に入られて……。

と、このあたりまでがこの作品の序章にあたるだろうか。

 

動物を通じた信頼関係で結ばれた幸と勇樹だが、お互いに自らの素性を話そうとはしない。もちろん読者にも明かされない。これらはストーリーが進むにつれて徐々に明らかになってくる。

ペットをめぐるエピソードや暴力団どうしのいざこざも出てくるけれども、私はこの作品にアットホームな空気を感じている。決して、ホームドラマではないのだけれど、人の心の温かさを感じさせてくれる作品だ。

 

大手ペット産業の社長が、ペットを金儲けの道具としか見ていない「守銭奴」のような立場で登場し、この男だけはまるで救いようがないのだが、もし物語が長く続いていれば、やりようはあったかなと思ったりもする。例えば、こんな展開だ。ペット産業がうまくいかなくて、そこにいた動物たちが殺処分されたり、劣悪な環境で放置されたりなどというニュースは珍しくない。だから、「生き物」を扱うペット産業は失敗が許されない。動物たちの幸福のためには、まず儲かる仕組みを作る必要があるという信念のもとに会社を経営している。それが周囲には守銭奴に見える。……というのはどうだろうか。

 

こんなことを私に発想させたのも、日本ではまだ珍しい「基本的には生体販売を行わず、飼い主が決まってからブリーダーから仕入れる」という方式を「いぬい」が取り入れていたからだろう。

 

(漫画所持作品リスト 689)

 

中垣先生の作品が続きますが、「漫画所持作品」を整頓してリスト作りをするにあたって、コツコツ一人で作業してるだけじゃ続かなそうなので、Twitterにもあわせて掲載することにした、その順番による。だから、同じ作家先生が続くこともあれば、保管場所がバラバラだったら、飛び飛びになることもあるため。