QUO VADIS
佐伯かよの(作画)新谷かおる(原作)
幻冬舎 バーズコミックス
全20巻+外伝1巻
1巻発行日 2007/8/24

過去・現在・未来をつなぐ強烈なスケールの作品。作画者と原作者は夫婦であり、両名とも漫画家である。

 

物語は現代のロンドンから始まる。骨董屋を営むオーディンは、ルーとソフィアというバチカンの「ハンター」に狙われており、既に何度か対戦している模様。今回もまた戦いに決着がつかず、オーディンは逃げることに成功した。

 

オーディンは実は未来人である。未来において人類は生殖能力を失い、人工的に子供を作り出していた。不老の能力を有している。しかし、治療不可能な怪我などをすれば死亡するから、不死ではない。いずれにしても、生殖能力が無いので、人類は滅亡の危機に瀕している。なぜそのようなことになったのか、人類の運命の分岐点を探すためにフレイア教授ら計8人で過去にタイムトラベルに出た。タイムパラドクスを恐れた当局により計画は許可されていない中での強行である。

8人はバラバラの時代・場所に着いており、それぞれ仲間を探して放浪することになる。主実行者であるフレイア教授と、学生であるオーディンはようやく現在で再会を果たした。

 

8人の仲間のうち5人は失敗しており生存しない。残る一人がジョシュアである。たった一人で永遠の時間を生きねばならず、その寂しさに耐え兼ね、自身をウイルスを用いて改造する。そして、マリアと結婚し、イエスという子をもうけた。これにより、イエス(イエスキリストである)もマリアも不老となっており、イエス復活の根拠となっており、またマリアの処女懐胎も、不老の修復能力によるものとされている。ジョシュアはその後、火山に身を投げて自殺している。

 

ジョシュアが作ったウイルスが元で、吸血鬼ウイルスが生まれており、吸血鬼ハンターであるルーとソフィアも「主の加護」(イエスの血を与えられている)により不老で、バチカンの「評議会」に所属。バチカンでは各地の吸血鬼ギルドを管理しており、はみ出した吸血鬼を狩っている。吸血鬼がやたらと増えるのを阻止していると思われる。

 

物語には、未来人がもう一人、関わってくる。フレイア教授の上司(あるいは、同僚か)にあたるシドで、過去への調査旅行に反対をしていた。だが、自身もフレイア達とは別に、それより遥か昔にタイムスリップしており、人類滅亡の阻止にもっと根本からかかわろうとしていた。やがて洗礼者ヨハネとなって、人類に干渉してくる。未来滅亡の分岐点を探ろうとするフレイア達と異なり、人類を作り直すことを目論んでいた。失敗をすれば何度でも過去に戻ってやり直すことを画策している。
 

未来人が大きく過去へタイムスリップした以外は、一般的なタイムトラベルものと違って、何度も時代を行き来することはなく、現代を中心に物語は進行する。過去の話はもちろん、未来の話も未来人が現在に至るまでの「回想」(過去の話)として登場する。

 

幼い頃、娼館に売られたところをイエスに救われたアテナもイエスの血を与えられて、バチカンの評議会の主要人物として活躍、この他、研究のための時間が欲しくて自ら望んで吸血鬼となったコーリング教授、不良吸血鬼である「伯爵」、伯爵に血を吸われて吸血鬼となった現代人のリズ、リズに他者を傷つけさせまいと自らの血をのませた新聞記者のエド、オーディンの骨董屋仲間で同じく伯爵に襲われたサラ、慈愛の人であるが吸血鬼のための牧場(血を吸わせるための少女を育てている)を営むパートリー夫人、アルフォンソと名乗り評議会議長を務めるイエスを裏切ったユダはじめ、異彩を放つ登場人物が多数交錯し、吸血鬼ウイルスの蔓延によるパンデミック「最後の審判」が人類に下される。

 

(漫画所持作品リスト 279)