「元禄忠臣蔵 第三部」 | こだわりの館blog版

「元禄忠臣蔵 第三部」


12月元禄忠臣蔵

12/24 国立劇場大劇場にて


真山青果=作
真山美保=演出
織田紘二=補綴・演出


 元禄忠臣蔵 第三部 四幕九場


 《吉良屋敷裏門》
   第一幕  吉良上野介屋敷裏門前


 《泉岳寺》
   第二幕  芝高輪泉岳寺浅野内匠頭墓所


 《仙石屋敷》
   第三幕  仙石伯耆守屋敷玄関
          同 大広間
          同 元の玄関


 《大石最後の一日》
   第四幕  細川屋敷下の間
          同 詰番詰所
          同 大書院
          同 元の詰番詰所


 出演者:松本幸四郎、中村芝雀、中村信二郎、坂東三津五郎、市川左團治、ほか


即日完売の人気もうなずける感動の舞台でありました。

国立劇場で3ヶ月連続上演の「元禄忠臣蔵」
いよいよ第3部は「討ち入り」から「大石最後の1日」とまさに見所満載の忠臣蔵のクライマックス。

特に大詰め「大石最後の1日」が素晴らしかった。

作者の真山青果は「元禄忠臣蔵」をこの「大石最後の1日」からスタートさせたという。
劇のクライマックスにしてこの大長編のきっかけとなった幕。
であるからストーリーといい、物語の構成といい、申し分ない出来。


大石内蔵助の切腹が決まる悲劇的な内容であるというのに
舞台にはなぜか不思議と【爽快感】が漂っている。
それは大石内蔵助が主人の仇討ちを成し遂げた【達成感】に満たされているとともに
この幕のもう一つのクライマックスである
磯貝十郎左衛門(中村信二郎)とおみの(中村芝雀)との恋も
内蔵助の仲介で実らせたもう一つの【達成感】が舞台にあふれてるからであろう。


登場人物たちはことごとく【死】に向かって歩んでいる。
しかし舞台には【爽快感】が漂い、
私は感動の涙がもう少しで流れてしまうところであった(必死でこらえてたが!)
それはまさに【死】をもってしても一つのことを成し遂げることを良しとする
外国人には到底わかりえない【武士の心意気】に現代の観客も感動するわけであり
大きく言えば「忠臣蔵」の人気もまさにこの点につきるのかなと思わされるのであります。


また「大石最後の1日」が感動的な幕になったのも
役者陣が充実していたことが理由でありましょう。


松本幸四郎大石内蔵助はもう序幕から出っ放しの奮闘公演でありましたが
主君の仇を討ち、全てを成し遂げた一種【悟り】を開いたかのような人物の【大きさ】を
舞台上で見事に演じていたと思います。
大石内蔵助はやっぱりこれ位【大きく】ないといけません。


中村芝雀おみのは、最初の出の小姓には女形のためどう見ても見えないのはご愛嬌でしたが
磯貝が【琴の爪】を持っていたことを知ったときのジッと目をつむってむせび泣くあの表情に
思わず目頭が熱くなりました。
あそこであれだけ表現できたからこそその後「もう何も言うな!」という態度になるのも納得がいきます。
もうあそこで全てを彼女は知ったのですから!


で、おみのの相手役・磯貝中村信二郎
一部には甘くて武士に見えないという批判もあるようですが、
朗々と台詞の連続でついつい舞台が硬くなりがちなこの演目を唯一やわらかいものにした功績は
萬屋の【甘さ】があったからだと思います。
私は萬屋の磯貝はこれはこれでよかったと思います。


思えば中村信二郎も
名門・萬屋でありながら猿之助一門に若くして参加し21世紀歌舞伎組のヒーローとして一時は活躍。
ワケあって猿之助一門から離脱した後は、一から出直しとばかりに
地道に脇役人生を再度歩んでいましたっけ。
でもここ数年の活躍はめざましく、
吉右衛門主演の舞台で活躍するのはもちろんのこと
ついに今月は国立劇場での磯貝役と主役級を演じている…。


活き活きと演じる萬屋を見ていると
これだけでも目頭が熱くなってくるものがあります。


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