吉田喜重①「ろくでなし」 | こだわりの館blog版

吉田喜重①「ろくでなし」

ろくでなし

5月に【篠田正浩監督作品特集】
6月に【大島渚監督作品特集】 をそれぞれやりました。

となると必然的に7月はこうなります…って勝手に自分で決めているのですが。
“松竹ヌーベルバーグ”の中で、現在でも一貫して“わが道を行く”孤高の巨匠、
女優・岡田茉莉子のご主人としても有名(?)な【吉田喜重監督作品特集】であります。


本日から6日間は吉田喜重監督作品を取上げていきます。
そして本日は記念すべきデビュー作「ろくでなし」で特集をスタートであります。


吉田喜重

吉田喜重監督作品特集第1弾
1960年劇場公開・松竹作品
脚本:吉田喜重
出演:津川雅彦、川津祐介、高千穂ひづる、安井昌二、千之赫子、他


吉田喜重監督は昭和8年生れ。
東京大学仏文科を卒業後松竹に入社、主として木下恵介監督の助監督を勤め、
本作で満を持しての監督デビューとなったわけです。


  大学生の秋山俊夫(川津祐介)は
  仲間の北島淳(津川雅彦)、森下、藤枝を乗せ高級乗用車を走らせていた。
  初夏のオフィス街を走る俊夫の車は、銀行帰りの郁子(高千穂ひづる)の前で車を止めた。
  彼女は俊夫の父、秋山物産社長の秘書である。郁子を無理に乗せ、淳と森下は金を奪った。
  俊夫はやがて「遊びもこれまでだ」と金をかえすよう命令した。
  「大学までいっててロクデナシね」と言い捨てて車を降りる郁子。
  俊夫と藤枝は盗むことに快感を得、森下はその金に誘惑を感じ、淳はなんの興味もなかった。


  --数日後、淳は郁子を強引にパーティに誘う。
  ところがパーティでは俊夫のいたづらで、郁子を帰国した新進シャンソン歌手にデッチあげていた。
  困惑する郁子の姿を淳は黙って見ていられなかった
  …パーティは淳の大立ち回りでめちゃくちゃになる。
  淳は俊夫らの仲間と亀裂が入り、郁子は淳を別の目で見るようになる。


  --夏休み、俊夫らは葉山の海岸で最後の休暇を送っていた。
  そこへ郁子が俊夫への伝達があるためやってくる。
  やがてダラダラした生活に嫌気がさした淳は郁子と一緒に東京に帰ることになった。
  その帰り道で郁子は秋山物産のアルバイトを世話すると約束し、家に誘い、そして結ばれる。


  俊夫らも学生生活が残り少なくなり、最後の馬鹿でかい遊びをして仲間を解散しようと提案する。
  馬鹿でかい遊びとは、郁子の銀行帰りを狙って本当に金を奪うこと。
  計画には付いていくが、ホトホト俊夫らの行動に嫌気がさしている淳は、
  犯行当日、無表情にハンドルを握りっていたのだが…。


いやぁ、若い作品です。
吉田喜重監督、この時27歳。
監督がこの頃考えていた事、【若者と大人たち】【ブルジョワと労働者】【男と女】などのキーワードが
川津祐介扮する金持ちのボンボン・俊夫津川雅彦扮する貧乏学生・という
対象的な2人のキャラクターを登場させ、彼らの全く相反する行動を真正面から衝突させ、
間に高千穂ひづる扮する郁子という【女性】を登場させる事で、
自らの考えを明確に作品の中で表現するというストーリー展開。

上のストーリーを読んでいただいてもお分かりの通り「他愛ない」といってもいいストーリーなのですが、
このストーリーを全編、歯の浮くような「こんな事今じゃ言わないよ!」とまで思うほどの
【キザ】な台詞で埋め尽くし、思い切った斬新な手法で描くことで、
吉田喜重の若いパワーが強引なまでに、この作品を見せきります。


しかも映像表現が斬新で、まさに有り余るパワーを映像に叩き込んでいるかのよう。
ラスト、津川雅彦の大手町オフィスをただひたすら疾走していくロングショット
(なぜ走っているかは見てのお楽しみ…)などは、ゴダールばりの映像表現。
こちらも「格好つけてるなぁ」と思いつつも結構見入ってしまいます。


キャストでは川津祐介が【ボンボン】俊夫役で、津川雅彦が【貧乏学生】淳役というのが意外でしたね。
今じゃ2人ともベテラン俳優。
やさしい父親役の多い川津祐介に、脂ぎったダンディ中年がお得意の津川雅彦。
今ならどう見ても「逆だろ!」と思われる役柄も、現在この作品を見るという事が逆に【新鮮】に映りました。
特に川津祐介などは大島渚の「青春残酷物語」 でも怒れる若者を熱演したように、
彼はこの当時は【ニヒルな不良役】を得意としていたんですね。
いやぁ先のことはわからないというけれど本当、月日が経つと俳優もどう変わるかワカランもんですなぁ。


■「ろくでなし」はこのDVD-BOXに収録されています。


  
  松竹
  吉田喜重 DVD-BOX 1


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