「ザ・ビッグ・ワン」 | こだわりの館blog版

「ザ・ビッグ・ワン」

ドキュメンタリー特集最後にはこの方に登場いただきましょう。

ドキュメンタリー特集第5弾
1997年アメリカ/イギリス作品
日本未公開
監督・出演:マイケル・ムーア

2002年、アメリカで「ボーリング・フォー・コロンバイン」がものすごい評判となり、そのニュースが日本にも入ってきた時、私はその作品の監督がマイケル・ムーアだと聞き「久々に聞く名前だなあ」と思った。

今でこそ「華氏911」で一躍時の人になりつつあるマイケル・ムーアであるが、その作風の過激さからか、はたまたその個性的な容姿(?)からか、日本での公開は意外と冷遇されていた。

1989年のデビュー作「ロジャー&ミー」もアメリカであれだけ評判をとりながらも、日本では単館ミニシアターでの静かな公開であったし、本作「ザ・ビッグ・ワン」にいたっては日本未公開。TVや出版と幅広い活躍をしていたにもかかわらず、日本にはほとんど紹介されておらず「ボーリング~」の大評判で日本の興行界もやっとこさ重い腰をあげた状態であった。
だから「ボーリング~」が公開された時には前記のとおりマイケル・ムーアに対して「久々」という印象をもったのだ。アメリカでは既に【元祖突撃レポーター】として名が通っていたにもかかわらず、だ。
今回その日本未公開作「ザ・ビッグ・ワン」をはじめて見たのだが、いやはやその過激さは今も昔も全く変わっちゃいない。
自身の著作「ダウンサイジング・ディス」の出版記念講演会で全米を飛び回りながら各地で起こっている<工場閉鎖><大量リストラ>や<組合結成トラブル>など様々な問題に彼は首を突っ込み、しかもその企業の責任者たちにアポなし取材を敢行しようとする。
1989年「ロジャー&ミー」で自分の故郷とゼネラルモータースとの関係に焦点を絞っていたが、8年後には自分の故郷に止まらず全米各地の問題にも首を突っ込むようになっていたのだ。

この作品以後は「ボーリング~」でアメリカの銃社会について鋭いメスを入れ、遂には「華氏911」で現在のアメリカ大統領・ブッシュに鋭すぎるメスを突き立てることとなるのだ。
まあ後に、時の大統領ブッシュに「おまえは愚か者だ!」と言いきるムーアのことを考えれば本作で有名企業のオーナーにアポ無し取材を入れる事などは見ていて「かわいい」もんだし、本作の制作時点では労働者側に完全に肩入れしており、後の作品のテーマとなる政治的発言も比較的おとなしいもんである。
しかしこの頃の作品は「ロジャー&ミー」もそうだが、あふれんばかりのユーモアが作品にあるのが見ていておかしくて魅力的だ。「華氏911」までなるとユーモアよりもアジテートの過激さの方が優先してしまい、見ていてトゲトゲしい作品になってしまっているのだ。まあこれが彼の本音なのかもしれないが…。
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タイトル: ボウリング・フォー・コロンバイン マイケル・ムーア アポなしBOX