2005年8月
民主党沖縄ビジョン【改訂】


- INDEX -
はじめに
I. 「沖縄」を考える
II. 私たちの目指す姿勢
III. 4分野における具体策


はじめに

 民主党は結党以来、沖縄政策に取り組んできた。1999年7月に「民主党沖縄政策」を発表し、2000年2月に「軍用地返還特別措置法(軍転法)改正案」を提出、同年5月には「日米地位協定の見直し案」を提示した。その後、2001年末より数次に亘り調査団を派遣し、2002年5月に「沖縄ビジョン協議会」を沖縄の有識者17名で設立し意見交換を行い、2002年8月に那覇市で「民主党21世紀沖縄ビジョン」を発表した。
 今回示したビジョンは、この3年間の環境変化を踏まえ、第三次沖縄振興開発計画の進捗も考慮し、新たなメンバーを加えたビジョン協議会を立ち上げ、その議論を踏まえ改訂したものである。


I 「沖縄」を考える

 沖縄は東アジアにおいて独自の地理的位置を占め、広大な海域に分布する亜熱帯性気候におおわれた島嶼地域である。
 このような特異な自然的風土の上に「琉球」という独自の国家を成立させ、日本列島とは異なる歴史をたどった。その後、島津侵入(1609年)、琉球処分=沖縄県設置(1879年)という経緯を経て段階的に日本社会のうちに編成され、更に太平洋戦争後にアメリカによる統治を経験した後、住民の選択・要求の結果として日本社会へ再び復帰したものである。
 沖縄は先の大戦で唯一の地上戦が繰り広げられ数多くの尊い人命が失われた土地であり、終戦後27年間は米国の施政権下に置かれたばかりか、更に1972年の復帰以降も在日駐留米軍専用施設面積の75%が集中する等の状況が続いていることが沖縄の進むべき道を妨げている。
 しかし、「沖縄」を考える時に、「負の清算」にとどまるべきではない。米軍基地をはじめ軍事基地を減らしていくための絶え間ない努力を続けながら、基地経済からの脱却方法を探ることが欠かせない。
 かつての環シナ海交易を通じて沖縄は、歴史的に中国本土、朝鮮半島や台湾、更には東南アジア各地と深いつながりを持ってきた。グローバル化が進む今日、東アジアの中心に位置する沖縄の地理的特性等はますますその重要性を高めている。
 こうした自然と風土、歴史と文化の資産を活かし、観光・交流、研究・教育や安全保障等で沖縄があらためて自主自立の新たな道を切り開くことを通じて、沖縄はアジア、そして世界への日本の情報発信や各種貢献を実現する力強い魅力あふれる先端モデル地域になりうると考える。


II 私たちの目指す姿勢

 民主党は「自立・独立」「一国二制度」「東アジア」「歴史」「自然」の5つのキーワードが、沖縄の真の自立と発展を実現するための道しるべになると考えている。つまり、沖縄において「自立・独立」型経済を作り上げるためには、「一国二制度」を取り入れ、「東アジア」の拠点の一つとなるように、沖縄の優位性や独自性のある「歴史」や「自然」を活用することである。そして、これらのキーワードを活用する沖縄を通じて、日本は目指すべき次なる姿を描けると考える。
 本土復帰後の沖縄においては三次に亘る「沖縄振興開発計画」に基づいて振興が図られ、社会資本整備など一定の成果をあげてきたが、一方で日本の他地域同様に中央集権的で画一的な制度が適用され、中央の発想による公共事業が行われてきたといえる。このため、補助金依存体質が助長され、また、経済活動が、本土、特に東京圏主導の構造になっている。この構造から抜け出るためには、まず、沖縄が独立の気概を持ち、その気概を中央政府がくじくことなく応援をし、自立型経済構造を築き上げることが重要である。ここで敢えて誤解を恐れずに「独立」という言葉を使ったのは、「日本からの独立」という意味ではないことは言うまでもない。
 この「自立・独立」を着実に進めるためには、地域主権のパイロットケースとしての「一国二制度」を全国に先駆けて導入する必要がある。既に行われているFTZ(フリー・トレード・ゾーン)※1)などが他地域と比べて優位性が見られない中途半端なものと言わざるをえない現状下では、むしろ、競うべき対象、連携すべき対象は「東アジア」の他国・他地域であるという視点での取り組みが求められる。そのため、奄美諸島を含めた琉球弧として、そして、個性豊かな伝統文化を内包する「歴史」、美しい海やサンゴ礁を有する島の魅力に根ざした、やすらぎや健康・長寿をもたらす沖縄の「自然」を最大限活かすこと、そのためのシナリオとして地域間交流、国際交流を積極的に進めること、戦争体験に基づき沖縄が取り組んできた国際平和確立に向けての取り組みを更に具体化することを目指した政策こそが、沖縄の真の自立と発展に寄与すると考える。
 なお、地域主権政策として民主党は道州制を提唱し、既に、3年前の当ビジョンでは「沖縄は歴史的にも地理的にも独自性が高く、九州と統合した単位で検討するべきでないと判断し、単独の道または州とするべき」としている。これを受けて、政府はじめ諸機関でも「沖縄」を単独の道州に位置付けてきたが、「沖縄州」としての財政的な裏づけを支えるためにも上記の5つのキーワードが重要な切り口になると考える。
※1)自由貿易地域、特別自由貿易地域は、沖縄の地理的条件を生かし、沖縄における企業の立地促進と貿易の振興に資することを目的として、関税法の保税地域制度に合わせ、国税、地方税の優遇措置等を整備した産業振興策。自由貿易地域が那覇空港の隣接地に2.6ha、特別自由貿易地域が中城湾港に122ha設置されている。


III 4分野における具体策

1.在沖縄米軍基地の大幅な縮小を目指して

 日本復帰後30年以上たった今なお、在日駐留米軍専用施設面積の約75%が沖縄に集中し過重な負担を県民に強いている事態を私たちは重く受け止め、一刻も早くその負担の軽減を図らなくてはならないと考える。民主党は、日米安保条約を日本の安全保障政策の基軸としつつ、日米の役割分担の見地から米軍の変革・再編(トランスフォーメーション)の中で在沖海兵隊基地の県外への機能分散をまず模索し、戦略環境の変化を踏まえて、国外への移転を目指す。
 また、沖縄が平和教育の発信地となるよう、平和に関する研究を更に促進し、真にアジアの平和と安定に寄与する沖縄を目指す。
 基地の対価としての補助金が沖縄経済に一定の役割を果たしているとの指摘もあるが、2002年度の一人あたりの行政投資額※2)が全国で16位程度であることからも窺えるように、決して中央政府から多額の資金が沖縄に流れているというわけではないことを認識し、基地縮小に際しての雇用を中心とした経済問題には、セーフティーネットの確保も含め十分な対策をとる必要がある。
※2)行政投資額とは、生活基盤投資、産業基盤投資、農林水産投資、国土保全投資などを総合した政府が地方に行う主な公共投資額である。

1) 日米地位協定の見直し
民主党は2000年5月に「日米地位協定の見直しについて」を提示した。2004年12月には沖縄国際大学への米海兵隊ヘリコプター墜落事故を踏まえ、事故等の捜査を原則日米両当局の合同捜査とする「日米合同委員会」の議事録を原則公開とする等の内容を加筆した「日米地位協定改定案」作成に着手した。沖縄では先般の少女への事件に見られるように米兵による卑劣な犯罪等も依然発生している。沖縄県等とも連携を深めながら、航空管制権及び、基地管理権の日本への全面的返還を視野に入れつつ、大幅な地位協定の改訂を早急に実現する。

2)『SACO 2』による更なる在沖米軍基地縮小
1996年、日米両政府が設置した「沖縄に関する特別行動委員会(SACO)」は、米海兵隊普天間航空基地の返還をはじめとする在沖米軍基地を整理・統合・縮小することに合意した。しかし、SACO合意が期待通りに進まない間に地域・国際環境は大きく変化し、米軍の軍事技術も目覚しい進展をみた。このような状況を踏まえて、SACO合意の適切な実施に向けて努力をし、また、沖縄県民の意思を最大限尊重した更なる基地の整理縮小を検討する『SACO2』の設置を目指す。

3) 在沖米軍基地縮小の基本的な方向性
現在、米軍は世界規模での再配置(トランスフォーメーション)を進めているが、キャンプ・ハンセンの都市型訓練施設について地元の反対にもかかわらず訓練を強行するという問題も発生している。
沖縄の負担軽減という観点に立てば、トランスフォーメーションの機を逃さず早期に上記『SACO2』を設置し、市街地の兵站施設、乱立する通信施設、遊休地の返還など、更なる米軍施設の縮小を図るべきである。同時に、在沖海兵隊の海外移転を、事前集積制度(POMCUS)※3)の可能性も含め積極的に検討を進める。
※3)事前集積制度とは「部隊別装備品事前配置」のこと。Pre-positioning Of Material Configured to Unit Setsの略。

4) 普天間米軍基地返還アクション・プログラムの策定
普天間基地の辺野古沖移転は、事実上頓挫している。トランスフォーメーションを契機として、普天間基地の移転についても、海兵隊の機能分散などにより、ひとまず県外移転の道を模索すべきである。言うまでもなく、戦略環境の変化を踏まえて、国外移転を目指す。民主党は、既に2004年9月の「普天間米軍基地の返還問題と在日米軍基地問題に対する考え」において普天間基地の即時使用停止等を掲げた「普天間米軍基地返還アクション・プログラム」の策定を提唱している。なお、いわゆる「北部振興策」については基地移設問題とは切り離して取り扱われるものであり引き続き実施する。

5) 思いやり予算の削減
思いやり予算については、2005年度で現在の特別協定の期限(5年)が切れる。経済、財政事情が悪化する一方で公共事業的支出が高まっており、基地の固定化を強めかねない。提供施設整備が過剰になっているとの指摘もあり、改訂を機に特別協定に基づく光熱水料、訓練移転費や地位協定を根拠とした提供施設整備費等について必要な削減を行う。

6) 基地縮小にあたっての沖縄支援
基地縮小後の跡地の有効活用については、沖縄の主体的取り組みを支援する。また、基地返還後の跡地利用は、今後の他の基地返還に資するよう、以下の点に留意すべきである。
完全に造成し直してからの再開発では、返還後の活用開始までに時間と費用がかかりすぎる場合がある。その場合には、例えばドクターヘリの離発着が可能な滑走路や医療インフラの活用など、現有施設を再利用・再活用して、より早期に地元に利益を還元すべきである。このような活用であれば、新規雇用を増加させる可能性も高まる。
沖縄の地理的特長を考慮し、国際貢献の視点を取り入れる。

7) 在沖米軍の基地問題協議への沖縄県の参加
在沖米軍の課題を話し合うテーブルに当事者の立場として沖縄県等も加える。また、現在、外務省に沖縄大使が設置されているが、沖縄国際大学での事故対応でも機能不全が指摘されたことを踏まえ、そのあり方、位置付け等について必要な見直しを行い、沖縄の声がより日本政府や米国に伝わるようにする。

8) 騒音被害の解消
嘉手納基地をはじめ、米軍機の騒音が基地周辺住民に健康被害と生活被害を与えていることについて、速やかに被害解消のための措置をとる。

9) 国際機関の誘致
沖縄の地理的特性を生かし、例えば東アジアを主たる活動地域とする国際機関を沖縄に誘致して、沖縄を東アジア地域に貢献する拠点とすべきである。


2.「沖縄を活かす」産業による雇用創出機会の拡大と自立型経済の構築

~中略~

10)自然や歴史等、沖縄の独自性を活かした交流促進に資する複合型観光・リゾート産業

~中略~

従来の大量輸送・大量消費型マスツーリズムといった環境面に負荷がかかる観光形態ではなく、自律的な持続可能な観光へと転換すると共に、アジアからの外国人を含む国際型観光地および長期滞在中心の観光地への転換を図り、各種コンベンションなどを通して観光客のみならずビジネスマンや学生等も含め幅広い年齢層が訪れる「3千万人ステイ構想」の実現に取り組む。

~中略~

15) ビザの免除、キャンペーンの実施等による東アジアとの人的交流の促進
県と民間事業者が一体となった海外からの訪問者増加に向けたキャンペーンを実施すると共に、地理的に近い台湾に対しては観光ビザの免除をするなどの入国管理の適切な運用によって、東アジアの人的交流の拠点を目指す。その一方で、麻薬をはじめとした不法物の沖縄への流入防止に一層努め、安全で健全な沖縄のイメージをアピールする。

~中略~

21) 地域通貨の発行
自立的な経済循環を形成して地域経済を活性化させ、地域通貨(エコマネー)を活用することでコミュニティの再生を促進し、介護・福祉、環境などの問題を地域内で解決する。
 
~中略~

25) 本土との間に時差を設定
本土からの観光客の活動時間を長くできるなど観光産業にメリットをもたらすため、本土との間に時差を設けることを、企業経営の負担等も勘案しつつ検討する。


3.世界の知性が集まり交流する「学問・研究の沖縄」を目指す

 沖縄独自の自然と風土、歴史と文化を生かして東アジア、更には世界の知性が集まり交流する「学問・研究の沖縄」を目指す。
 このため、言語や環境、芸能分野の教育に力を入れ、戦争体験に基づく国際平和の追求等、本土にはない特性を伸ばす。また、こうした沖縄の特性を生かしつつ大学院大学を設置し、自然に囲まれた住みよい研究・教育環境の整備等を図る。

26) 語学教育
沖縄の地理的、歴史的、社会的特性を踏まえて徹底した英語教育を行うと共に、中国語などの学習も含め、沖縄の「マルチリンガル化」を促進する。
沖縄県下全小学校での、英語などの語学教育の実施を推進する。

~中略~

以上





http://www.dpj.or.jp/okinawavision/







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