佐藤由美子著「戦争の歌がきこえる」を読みました。
すごい本に出会いました!
もしかしたら、自分の人生の中でも一二を争うような本!?
びっくりしました。こんなすごい本があるなんて!つまりはこんなすごい人(著者)がいるなんて!
著者は音楽療法士で、帯に「私がアメリカのホスピスで見届けたのは第二次世界大戦を生き抜いた人たちの最期だった」と書かれているので、戦争中に兵隊として戦地に行き生きて戻って来た人の最期を著者が音楽療法士として看取ったような話なんだろうと思っていました。
実際、そうでした。そうだったんですが、一つ一つのエピソード(つまりの一人の患者さんの話)の中で、その患者さんたちの語る言葉はごくわずか。そもそも一つ一つのエピソードは20ページ前後のごく短いもの。それなのに、どの話もすごく感動する。どのエピソードも涙が出そうになる。
でも!!
そういう本はたくさんある。何冊も読んだことがあります。
この本のすごいところは・・・
最後のエピソード、第八章「忘れられた中国人たち」を読むと、この本の真のテーマがわかります。
そのテーマとは、「ソーシャル・アムニージア(social amunesia)」あるいは「ソーシャル・フォーゲッティング(social forgetting)」、日本語に直訳すると「社会的忘却」。あるいはその裏返し(と言ってもいいのだと思う)の「コレクティブ・メモリー(collective memory)」あるいは「ソーシャル・メモリー(social memory)」、日本語に直訳すると「集合的記憶」。
※ ↑の用語は全てこの本の記述。
全ての話は、我々というのか、多くの日本人の集合的記憶とは異なるエピソードの話だったのです!
エピローグにそれが明確に書かれています。
「・・・、この本では、日本で生まれ育った私が抱いてきた「集合的記憶」とはかなり異なる記憶をもった人たちのストーリーを紹介してきた。」
だから、すごく深いのです。一つ一つのエピソードが。すごく感動するエピソードなのに、単なる感動話ではない深い話。
「死を前にした人が語る感動話」程度に思っていた私の予想は大きく裏切られ(もちろん良い意味で)、思いがけず、社会学の良書を読むことができました。
佐藤由美子さん!この人は本当にすごい!