名前を呼ばれて、
病室のカーテンが、サッと開く。
入ってきたのは、毎朝ボクの具合を見に来る、消化器科の主治医ではありませんでした。
白衣を着た、見知らぬ医師。
その後ろには、物腰の柔らかそうなカウンセラーが続いていました。
「精神科の〇〇です」
「カウンセラーの〇〇です」
その言葉を聞いた瞬間、ボクの中に冷たい違和感が走りました。
なぜ、精神科医がここにいるのか。
ボクの病気は「肝硬変」のはずで。
非代償期、しかも末期、このままでは死ぬと言われた。
ここまですべて、肝臓の話。
そっち側の白衣の人たちはベッドの脇に立ち、ボクを見ながら、淡々と質問を始めました。
最近の気分の落ち込みについて。
夜、眠れているかどうか。
そして、どれくらいの期間、どんな風にお酒を飲んでいたのか。
正直、ボクは「自分は違う」と思っていました。
仕事はちゃんとしていたし、
酒を飲んで暴れるわけでもない。
家族に怒鳴り散らすわけでもない。
飲み過ぎで記憶がなくてもちゃんと帰れた。
だから、彼らの視線に、少し違和感があった。
質問が終わると、一枚の紙をボクの前に置かれました。
専門の問診票でした。
「最近、お酒を飲む量をコントロールできないと感じたことがありますか」
「お酒が原因で、大切な予定をキャンセルしたことがありますか」
「周囲から、お酒の量を減らすように言われたことがありますか」
四角い枠の中に、チェックを入れていく。
ペンを進めるたびに、自分が"そっち側"に分類されていく感覚。
最後に渡された、一冊のパンフレット。
表紙にハッキリと病名が印刷されていました。
「アルコール依存症」
えっ!?アル中?
病室は、相変わらず静かでした。
点滴も、
廊下の足音も、
昨日と何も変わりません。
ただ、ベッドの横の棚に、そのパンフレットだけが置かれていました。
ボクは
「アルコール依存症」
