— 人生の再設計 —
「ボクは、どうしたい?」
その問いを、
自分に聞き続けるようになってから、
もう一つ、
避けられない問いが出てきました。
ボクにとって、
幸せって、
何だったんだろう。
出世すること。
給料が上がること。
役職がつくこと。
そう聞かれたら、
以前のボクは、
迷わずそう答えていたと思います。
現に、
そのために35年、
走り続けてきました。
でも、
いざ立ち止まって考えてみると、
その答えに、
素直に頷けない自分がいました。
出世した先に、
何があったんだろう。
役職がついた時、
心から嬉しかったんだろうか。
正直に言うと、
覚えていません。
達成感より先に、
次の仕事、
次の課題、
次の会議のことを考えていました。
喜びを、
味わう前に、
もう次へ向かっていたんです。
じゃあ、
本当の幸せって、
何だったんだろう。
――――――――――
答えは、
まだ出ませんでした。
でも、
一つだけ、
はっきりしたことがあります。
これまで信じてきた「幸せの形」は、
少なくとも、
ボク自身が選んだものではなかった、
ということです。
会社が評価する基準。
世間が「成功」と呼ぶ形。
いつの間にか、
それを自分の幸せだと思い込んでいました。
そのことに気づいた時、
ふと、
自分の仕事のことを思い出しました。
ボクは、
一級建築士です。
35年間、
数千棟の建物と向き合ってきました。
古くなった建物。
歪んでしまった建物。
もう住めないと言われた建物。
それでも、
壊すだけが選択肢じゃない。
土台さえ生きていれば、
建て替えることができる。
設計を、
一からやり直すことができる。
そんな建物を、
何度も見てきました。
――――――――――
だったら。
人生も、
同じかもしれない。
52年生きてきて、
あちこち歪んで、
ヒビも入っている。
一度、
倒れかけもした。
それでも。
土台さえ残っていれば、
建て替えられる。
設計を、
やり直せばいい。
出世でも、
給料でも、
役職でもない。
自分自身がちゃんと納得できる「幸せの設計図」を、
もう一度、
自分の手で引き直せばいい。
そう思えた瞬間、
不思議と、
肩の力が抜けました。
何十年もかけて、
他人の設計図の上で生きてきました。
ここからは、
自分の設計図を持っていい。
人生の再設計。
まだ、
何ひとつ、
具体的には決まっていません。
それでも、
初めて、
自分の人生を、
自分の手に取り戻せた気がしました。